残酷なまやかし
「お父さん……! お母さん……!!」
ぼくは、二人に飛びついた。
お父さんとお母さんは、やさしく受け止めてくれる。
「どうして!? おはかの中にいるんじゃなかったの!?」
「こんな時期だからな」
「あなたに会いに来たのよ」
「そうなの!? ぼく、二人に話したいことがいっぱいあるんだよ!!」
ぼくは、お兄ちゃんとはぐれたこともわすれていっしょうけんめいおしゃべりした。
二人は、笑顔でそれを聞いてくれる。
「それでね、それでね……!」
「ははは。大和、そんなに焦らなくても大丈夫だぞ」
「そうよ。これからは、ずっと一緒にいられるんだからね」
「ずっと、いっしょ……?」
「ああ、そうだよ」
「さあ、行きましょう」
そう言うと、ぼくの左手をお父さんが、右手をお母さんがつかんだ。
そのまま、どこかに行こうとする。
ここでようやく、ぼくはおにいちゃんとはぐれたことを思い出したんだ。
「待って! ぼく、お兄ちゃんといっしょに来たんだよ! どこか行くなら四人で……!」
「……大和、お兄ちゃんは連れて行けないんだよ」
「……そうなの。でも、大丈夫よ。お父さんとお母さんがいるから、寂しくなんてないわ」
「ぼくはいやだよ! お兄ちゃんがいっしょじゃなきゃいやだ!」
「……そうか。それじゃあ仕方ないな」
「……聞き分けの悪い子は、無理矢理連れて行くしかないわねぇ!」
ぼくの手を引く力が強くなる。
顔も、さっきまでのやさしい二人とは全然ちがう……!
「こ、こんなのお父さんとお母さんじゃないよ……!」
「……何を言っているんだ」
「……そうよ。どう見ても、あなたのお父さんとお母さんでしょう」
ぼくの体は、少しずつ引きずられてしまう。
(ちがう、ちがうよ……! だれか、助けて……!)
その時、おはかが光ったんだ――――――――――。