一色隊の無知な元気印、緒方颯
適性試験二日目、一色隊のとある少年が、自分ですら知らなかった才能を開花させることになる。
それは、午前中の戦闘能力を計測するテストの時に起きた。
剣や銃などの様々な武器を使い、現在どれくらいの力を持っているのか調べるのだ。
「な、なんでガキがあんな動きできるんだよ……!?」
「本物じゃないとしても、なんの躊躇もなく撃ち込んでくるなんて……!」
「……颯くん、すごい」
「心、ありがとな! 自分でもびっくりしたぜ! 銃を握ったら、体が勝手に動いたんだ!」
「……君についての謎は深まるばかりだよ。データは出てこないし、銃の扱いは上手いし、本当に何者なの?」
「それはマジで俺も知りたいっすよ! 湊人さん、なんとか調べてもらえませんか!?」
「手は尽くしてるのにこの状態なんだから、プライド傷付くなぁ……」
戦闘能力計測テスト、銃撃戦部門一位、緒方颯。
勿論、本物の銃撃戦ではない。
モデルガンに自分の色が決められたペイント弾を込め、数人で打ち合う。
ある程度時間が経過した後に、多くの相手の服に弾を当て、自分の汚れが少なかった者に高得点が与えられるという仕組みだ。
颯は素晴らしい身のこなしで、服を汚すことなくたくさんの弾を命中させた。
他の武器ではそれほどの力を発揮できなかったので試験全体では一位になれなかったが、銃撃戦では断トツの成績を収めたのだ。
「おい、見たかあの動き……」
「……ああ。あれは軍人というよりも……」
銃撃戦専門部隊の隊員たちが話していた声が、颯の耳に届くことはなかった。
お昼休憩を挟んで、午後の試験が始まる。
残された試験は、あと二つだ。