纏わりつく声と赤
……気付くと俺は、真っ暗な空間にいた。
いつもと同じように寝たはずなのに、おっかしいなー……。
「おーい! 誰かいるかー!?」
何も見えないので、とりあえず大声で叫んでみる。
すると、それに応えるように人の声が聞こえた気がした。
このままここにいても仕方ないから、俺は勘だけを頼りに歩き出した。
徐々にその相手に近付いているのか、声は大きく、はっきりと聞こえるようになっていく。
「颯はいい子だ。さぁ、こっちに来るんだよ」
……俺の足は、突然止まった。
自分でそうしようとしたわけじゃない。
急に、動かなくなったんだ。
……俺は、この声を知ってる。
誰なのかはわからない、けど……。
(すごく、怖い……!)
俺は、動かない足を無理矢理動かし反対方向へと走り出した。
でも、その声はどこまでも追ってくる。
離れてるはずなのに、さっきよりも大きく俺の耳に響いてくる……!
「颯、どこに行くんだい? あんたの生きる場所はここだろう?」
「違う、違う……! あんたなんか知らない……!!」
「さぁ、帰ってくるんだよ。あんたみたいな子どもが、普通に暮らせるはずないんだからね」
……その瞬間、両手が濡れている感触がした。
恐る恐る見てみると、それは真っ赤に染まっていて……。
「な、なんだよこれ!?」
「何って、今まであんたがしてきたことだろう? あんたは汚れてるんだよ」
「知らない、知らない……! 俺は何も知らないんだ……!」
真っ暗で何も見えないはずなのに、両手の赤だけがくっきりと浮かび上がっている。
(助けて……! 誰か助けてくれ……!!)
俺は声と赤を振り払うように、暗闇をひたすら走り続けたんだ――――――――――。