またどこかで
「透花さーん!!」
俺は、透花さんを見つけると駆け寄っていく。
たまに言われるんだけど、自分でも犬みたいだと思うぜ!
「待たせてすんませんっす!」
「ううん。こちらが、颯くんの昔のお友達?」
「うっす! 小笠原渉っていいます!」
「こんにちは、小笠原くん」
「……こんにちは」
渉は、軽く会釈をした。
「ここで会ったのも何かの縁だし、よかったらうちでご飯でも食べて行かない?」
「いいっすね! 俺も、聞きたいことがまだまだあるし!」
「……誘ってくれて、ありがとうございます。でも俺、この後用事があるので……」
「そうなんだ。残念だなぁ」
「そっか……。でも、用事なら仕方ないよな!」
渉は、俺と透花さんを交互に見るとガバッと頭を下げた。
突然の行動に、俺は驚いてしまう。
「どうした!?」
「……こいつのこと、よろしくお願いします。俺、昔からずっと一緒でしたけど、こいつのこんな明るい顔を見たの初めてです。だから……」
渉の様子を見て、透花さんは何かを感じ取ったのだろう。
柔らかな笑顔を浮かべると、渉の肩に手を置いた。
「任せて。颯くんは、もう私にとって家族も同然の存在だから」
その言葉を聞いて、少しだけ渉の肩が揺れたように見えたのは俺の気のせいか……?
「……ありがとうございます。じゃあ、俺はこの辺で……」
「え!? もう帰っちゃうのかよ!?」
「……ああ、悪いな」
「また! またどこかで会えるよな!!」
「……俺はもう、お前に会わないことを祈るよ」
その言葉の意味を確認しようとした時には、渉はもういなくなってた。
結局、俺が施設育ちで、昔から女が苦手だったってこと以外はわかんなかったな……。
でも、これすらわかんなかった頃に比べれば前進してるよな!
「颯くん、帰ろうか」
「うっす!」
「今日もたくさん買ったね」
「セールだったんで、ついつい買い過ぎちゃいました! あっ、荷物持ちます!」
「ありがとう。私はかわいい簪を見つけたから買ったんだよ」
「簪! いいっすね! 今度祭に行く時に使いましょう! セットさせてください!」
「ありがとう。よろしくお願いします」
なんでもない会話を交わしながら、俺たちは別荘へと帰る。
そして、いつもと同じように夕飯を食べ、眠りに就いたんだ――――――――――。