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その約束を大切に思うのは、あなただけではないんだよ。
……ここまで思い返す間に、手元にあった花冠は完成していた。
ふと視線を前に向けると、彼女がこちらに歩いてくるのが見える。
「理玖、私も一緒に休憩していい?」
「……好きにすれば」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
彼女は、僕の隣に座った。
特に話したいこともないので、僕は黙っている。
……沈黙は嫌いではないけれど、過去のことを思い出していたのでなんとなく気まずい。
しばらくすると、僕はゆっくりと立ち上がった。
(……もう、昔のことなんて覚えてないよね)
彼女の頭に花冠を乗せる。
「……あげる」
そして、再び向日葵畑に向かった。
……視界の端に見えた彼女の顔が赤かった気がしたけれど、きっと僕の勘違いだろう。