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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十一話 カリンの花を君にあげる
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独り、想う。

 ……僕が、彼女の待つあの家に戻ることはなかった。

 これ以上彼女と暮らし続けることは、お互いのためにならないと感じたからだ。

 あの日僕は、歩きながら色々なことを考えた。

 ……その結果、これからは自分一人の力で生きていくべきだと思ったんだ。

 彼女が僕と一緒にいてくれたのは、両親が頼んだからだとノートに書いてあった。

 ……僕はもう、大人になった。

 彼女に守ってもらわなくても、一人で生きていける。

 ……そう考え、彼女に何も告げることなく森へと戻った。

 おぼろげな記憶を頼りに、昔家族で暮らしていた家を探す。

 ……それは、変わらずそこにあった。

 しばらく人が住んでいなかったから荒れてはいたけれど、掃除をすればなんとでもなる。

 もちろん、安全な場所ではないというのはわかっていた。

 ……でも僕は、命の安全よりも心が楽な場所を選ぶことにしたんだ。

 彼女の近くにいればいるほど、この気持ちは大きくなってしまう。

 ……だけど、僕の気持ちが受け入れられることはない。

 それは、僕にとっても、彼女にとっても辛いことだから。

 ……離れることになっても、きちんと別れの言葉を言うべきだったのかもしれない。

 そんな風に後悔することが、ないわけじゃなかった。

 ……僕の瞳に焼き付いた彼女の表情は、泣いている姿だったからね。

 でも、一度戻れば別れがたくなってしまうのは自分でもわかってる。

 ……だから、仕方のないことだったんだ。

 こうして、一度広がった僕の世界はまた狭くなってしまった。

 僕は、彼女と自分自身の気持ちから逃げ出したまま、数年の時を一人で過ごしたのだった――――――――――。

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