名前を呼ぶだけで
食事を終えてから、僕は自室に籠り一人でノートと向き合っていた。
……ノートに絡みついていたデュールサルマンの蔓は、簡単に解けた。
昔は、いくら引っ張ってもびくともしなかったのに……。
この植物は火にも強いため、焼き切るということもできなかったんだ。
ここ数年触れていなかったけど、僕には力がついたらしい。
……まあ、他の人に比べればまだまだ非力なんだろうけど。
そんなことを考えながら、ページを捲っていく。
そこには、先程彼女が話してくれたことや、父さんたちの研究の結果などが書かれていた。
夢中で読み進めていた僕の目が、ある一点で止まる。
そこには、彼女に関する記述があった。
(……そうだったんだ。だから彼女は……)
普通ならば、こんなにすぐに納得できるような話ではないことはわかってる。
……まるで、おとぎ話の世界だ。
だけど、これが事実ならば、僕が彼女に対して疑問に思っていたことが全て解決するんだ。
……僕は最後までノートを読み終えると、静かにそれを閉じた。
信じがたい内容だったけど、僕の彼女を想う気持ちは何も変わらない。
(……透花、君が好きだ)
なんとなく恥ずかしくて、最近はなかなか呼べない名前を心の中で呟く。
……それだけで、心がこんなにも温かくなるんだ。
僕はとある覚悟を決めると、その日は眠りに就いたのだった――――――――――。