少年から大人へ
……森にいられなくなった僕たちは、町で暮らし始めた。
薬を飲めば瞳の色は変えられるけど、僕はほとんど外に出なくなった。
……ここには、珍しい薬草も、優しい木漏れ日も、綺麗な川もない。
大勢の人間に、直接照り付ける太陽の光、そして整備された街並み……。
十年以上も自然に囲まれた暮らしをしていた僕に、馴染めるはずがなかった。
僕は、あの夜のことを教えてほしいと何度も彼女にせがんだ。
どうして僕たちはあの家で暮らせなくなってしまったのか、いつになったら森に帰れるのか、両親の行方を知っているのか……。
「……理玖がもう少し大人になったら、きちんと話すから」
……でも、いつもこう言われて何一つ教えてもらえないんだ。
そのうち僕は、彼女に質問することをやめた。
どうせ何を聞いても今は教えてもらえない。
……それに、あまりしつこくして彼女に嫌われるのは嫌だった。
心のどこかで、わかっていたんだ。
……両親はもう、帰ってこないんだろうって。
だから、彼女を失うことだけはなんとしても避けなければならなかったんだ。
彼女は、僕に教えるつもりがないんじゃない。
僕が大人になれば話すって言ってくれてる。
……それなら、僕は一刻も早く大人にならなければならない。
僕は、薬を飲んで家から出るようになった。
図書館に行ったり、植物に関する知識を活かして花屋でアルバイトを始めたりした。
そうして、あっという間に三年の月日が経っていたのだった――――――――――。