彼女が僕の家族になった日
翌朝、目を覚ますと僕は一目散に部屋を飛び出した。
……彼女が帰ってしまっていないか、確認するためだ。
キッチンに向かうと、母さんと一緒に料理をしている後ろ姿が目に入った。
(よかった……。帰ってなかった……)
慌ててやって来た僕の様子を見て、コーヒーを飲んでいた父さんは笑う。
「理玖、おはよう。もうすぐ朝ご飯ができるから、着替えてきなさい」
「……おはよう。わかった」
「それから、寝癖もひどいぞ。彼女に見られる前に直してくるといい」
「………………………………!!」
僕だけに聞こえるように、耳元でこそっと言う。
……すぐに頭を触って確認するが、確かに大変なことになっているようだ。
僕は部屋に戻ると、寝間着から普段着へと着替える。
それから洗面所に向かい、寝癖を直すだけではなく顔も洗った。
そして、何事もなかったかのようにみんなの所へ行く。
「おはよう、理玖」
「理玖くん、おはよう」
「……おはよう」
テーブルには、完成した朝食がずらりと並んでいる。
僕は、当たり前のように彼女の隣に座った。
みんなで挨拶をすると、それを食べ始める。
しばらくすると、父さんが徐に口を開いた。
「昨日、理玖が寝てから色々話したんだが、彼女にはしばらくうちで暮らしてもらうことになったよ」
「……しばらくって、どれくらい? けがが治るまで?」
僕は、表情に出さないように喜びを必死に抑えながら言った。
……でも、父さんには全部お見通しみたいだ。
笑顔を携えながら、優しく僕に語りかける。
「さあ、それはわからないな。でも、理玖が思っているよりもずっと長い期間だと思うよ」
「……ふーん、そうなんだ」
僕は、興味がない様子を装う。
そんな僕に話しかけたのは、今度は父さんではなく彼女だった。
「今日からよろしくね、理玖くん」
「……よろしく。とうか」
こうして、彼女は僕たち家族と一緒に暮らし始めたんだ――――――――――。