僕の世界を変える人
……僕は父さんと母さんと一緒に、物心ついた時から森の中で暮らしていた。
僕は、一般に魔法使いと呼ばれる一族の末裔だった。
強大な力を持っていた過去には、魔法使い狩りにも遭っていたらしい。
だけど、年月が経つにつれて一族の力は弱まってしまった。
……既に僕たちには魔力など宿っておらず、魔法を使うことはできない。
普通の人間と違う点といえば、薬草の扱いに秀でているくらいだ。
僕は、自分が作った薬を人に渡す前に必ず味見をする。
そうすると、なんとなくこの薬が相手にどのような作用を及ぼすかがわかるのだ。
だから、動物性食品は決して口にしない。
この舌を、鈍らせるようなことはしたくないからだ。
見た目にも、みんなとは違うところが一つだけある。
……それは、瞳の色だ。
僕たち一族の瞳は、金色をしていた。
これが、魔法使いである唯一の証と言ってもいいだろう。
……時代は、変わった。
普通の人間たちに溶け込んで暮らすことも、できたのかもしれない。
だけど両親は、幼い僕の安全を守るために森で静かに暮らすことを選んだらしい。
……異端な者は、いつの時代でも迫害される。
僕の世界は、両親と植物、そしてたまに家を訪れる魔法使いの大人たちで構成されていた。
「とても綺麗な瞳だね。まるで、太陽に照らされた向日葵畑みたい……」
そんな僕が初めて会った魔法使いじゃない人間が、彼女だった――――――――――。