みんなが笑ってくれると、オレも嬉しいんだ!
みんなと合流してから、オレとシンは謝った。
事情を説明したら分かってくれて、怒るヤツはいなかったんだけど……。
「こんなことがもう起こらないように、リードでもつけておいたらどうかな?」
笑顔でこう言ったミナトのことを、オレは一生忘れないぞ!
危うく、自由を奪われかけたんだ!
シンが反対してくれて、この件はなしになったんだけど……。
本当にリードをつけられたら嫌だから、これからはもっと慎重に行動しようと思った。
みんなで別荘に帰ってきた後、オレはシンと一緒にお風呂に入った。
ハヤテにブラッシングもしてもらったから、もふもふの毛並みが復活したぞ!
一息ついたから、これからあの実を食べるんだ!
シンが、実を配ってくれる。
見たこともない実に、みんな興味津々みたいだぞ!
「いただきます……」
まず、それを口にしたのはシンだった。
シンは、いつもは半開きの目を開く。
「すごくおいしい……」
シンの言葉を聞いて、みんなも実を口に運ぶ。
歓声の後に、そこには笑顔が広がった。
みんなが笑ってくれると、オレも嬉しいぜ!
「何コレ!? めちゃくちゃおいしいんだけど!」
「濃厚な甘さなのに、くどくないのがすごいです。旨味が凝縮されてるんですね」
「……そこまで甘いものが得意ではない私でも、これはうまいと感じるな」
「へえ。こんな実があるなんてね。僕にも、まだまだ知らないことがたくさんありそうだ」
「うっめー!! ぱかお、すげーぜ!」
「本当においしい。美海ちゃん、口の周りに蜂蜜がついているよ」
「え!? どこ!? とうかねえ、とって!」
「………………………………♪」
「大和も気に入ったか? これ、本当にうまいな!」
みんなが盛り上がってるのに、リクだけは何も言わずに考え込んでる。
これ、絶対にリクの好きな味だと思うんだけどな……。
「……これ、どんな木に成ってた?」
リクは真面目な顔のまま、オレに話しかけてきた。
(普通の木に、この実がたくさん成ってたんだ! 色々話してたら、木が感動して泣いて、実を落としてくれたんだぞ! オレが欲しいって言ったらくれた!)
「……ぱかおは、木が泣いて実を落としてくれたって言ってるよ」
「やっぱり、この実は幻の……」
(ああ! リク、ダメだぞ! 名前は言わないでくれ!)
「……名前は言わないでほしいって」
「……どうして?」
(今度会った時に、名前を聞く約束をしたんだ! だからそれまでは知りたくない!)
「次に会った時に、名前を教えてもらう約束をしたんだって。だから……」
「……わかった」
納得してくれた様子のリクは、その後は口を開くことはなかった。
でも、いつもよりも優しい表情をしてたから喜んでくれてるのは分かったぞ!
色々なことがあったけど、みんなに喜んでもらえてほんとによかった!
今度会う時は、シンを連れて行って紹介するんだ!
三人で仲良くおしゃべりできたら最高だよな!
……シンにあいつの声が聞こえるかどうかはわかんないけどさ。
でも、オレの声が聞こえるシンならきっとあいつの声も聞こえる気がする!
こうしてオレの夏の日の冒険は、笑顔で幕を閉じたんだ!