……心配かけてごめん。
(シーン!!)
オレの声に、シンが振り向く。
それは、いつものゆっくりとした動きじゃなくて、どこか焦っていて……。
「ぱかお……!」
シンは、走ってオレに抱き付いてきた。
よく見ると、いつもよりも目が赤いような……?
(シン、どうしたんだ? 目が赤いぞ?)
「どこ行ってたの……?」
(え?)
「急にいなくなるから、心配した……」
やっぱり、さっきの声は聞こえてなかったのか……。
オレは、甘いニオイを辿って不思議な出会いを経験したことを説明した。
(オレ、行ってくるってちゃんと言ったんだぞ!)
「そっか、そうだったんだ……。声、かけてくれてたんだね……」
(おう! 聞こえてなさそうだなとは思ったんだけど、我慢できなかった!)
「ロウソク作りが終わってぱかおを探したら、どこにも見当たらなくて……。悪い人に捕まってたらどうしようって……。それか、森に帰りたくなったのかもしれないって……」
(オレが、何にも言わずにお前のところからいなくなるわけないだろ!)
「そう、だよね……。とにかく、無事に戻ってきてくれてよかった……」
シンが、更に強くオレを抱き締める。
この体温を感じる度に、シンのこと大好きだなって思うんだ。
シンが思ってるよりも、オレはお前のことが大好きなんだから安心してくれよな!
(……心配かけてごめん)
「ううん、僕がちゃんと聞いてなかったのが悪いし……。これが、その実?」
シンは、オレの首の葉っぱを指差す。
あれだけ激しく走ったけど、中身が割れた様子はない。
(おう! そうだぞ! ちゃんと、全員分貰ってきたんだ!)
「……頑張ったんだね、ぱかお。こんなにボロボロになって……」
シンはオレを優しく撫でてくれる。
やっぱり、シンに撫でてもらうのが一番気持ちいいな!
「……帰って、お風呂に入ろう」
(その後は、ハヤテにブラッシングしてもらうんだ! あれ? そういえばみんなは?)
「……別の場所を探してる。ぱかおを見つけたって連絡しなきゃ……」
(みんなにも心配かけちゃったんだな……)
「事情を説明すれば、ちゃんと分かってくれるよ。それに、元はといえば僕のせいだし……」
(いや、オレが我慢できなかったせいでもあるぞ!)
「……じゃあ、二人で一緒に謝ろう」
(おう! そうしよう!)
シンは、オレを抱いたまま歩き出した。
……本当に、心配かけちゃったんだな。
オレはその優しい体温に、自分からもしっかりと抱き付いたのだった――――――――――。