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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十話 イベリスの誘惑
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……心配かけてごめん。

(シーン!!)


 オレの声に、シンが振り向く。

 それは、いつものゆっくりとした動きじゃなくて、どこか焦っていて……。


「ぱかお……!」


 シンは、走ってオレに抱き付いてきた。

 よく見ると、いつもよりも目が赤いような……?


(シン、どうしたんだ? 目が赤いぞ?)

「どこ行ってたの……?」

(え?)

「急にいなくなるから、心配した……」


 やっぱり、さっきの声は聞こえてなかったのか……。

 オレは、甘いニオイを辿って不思議な出会いを経験したことを説明した。


(オレ、行ってくるってちゃんと言ったんだぞ!)

「そっか、そうだったんだ……。声、かけてくれてたんだね……」

(おう! 聞こえてなさそうだなとは思ったんだけど、我慢できなかった!)

「ロウソク作りが終わってぱかおを探したら、どこにも見当たらなくて……。悪い人に捕まってたらどうしようって……。それか、森に帰りたくなったのかもしれないって……」

(オレが、何にも言わずにお前のところからいなくなるわけないだろ!)

「そう、だよね……。とにかく、無事に戻ってきてくれてよかった……」


 シンが、更に強くオレを抱き締める。

 この体温を感じる度に、シンのこと大好きだなって思うんだ。

 シンが思ってるよりも、オレはお前のことが大好きなんだから安心してくれよな!


(……心配かけてごめん)

「ううん、僕がちゃんと聞いてなかったのが悪いし……。これが、その実?」


 シンは、オレの首の葉っぱを指差す。

 あれだけ激しく走ったけど、中身が割れた様子はない。


(おう! そうだぞ! ちゃんと、全員分貰ってきたんだ!)

「……頑張ったんだね、ぱかお。こんなにボロボロになって……」


 シンはオレを優しく撫でてくれる。

 やっぱり、シンに撫でてもらうのが一番気持ちいいな!


「……帰って、お風呂に入ろう」

(その後は、ハヤテにブラッシングしてもらうんだ! あれ? そういえばみんなは?)

「……別の場所を探してる。ぱかおを見つけたって連絡しなきゃ……」

(みんなにも心配かけちゃったんだな……)

「事情を説明すれば、ちゃんと分かってくれるよ。それに、元はといえば僕のせいだし……」

(いや、オレが我慢できなかったせいでもあるぞ!)

「……じゃあ、二人で一緒に謝ろう」

(おう! そうしよう!)


 シンは、オレを抱いたまま歩き出した。

 ……本当に、心配かけちゃったんだな。

 オレはその優しい体温に、自分からもしっかりと抱き付いたのだった――――――――――。

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