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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十話 イベリスの誘惑
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また絶対に会おうな!

(……というわけだ!)

(な、なんていい話なんじゃ~……!)

(え!?)


 オレが話し終わると、急にはちみつの実が木からボロボロと落ちてきた。

 それはまるで、涙みたいで……。


(……もしかして、泣いてるのか?)

(ああ。お前の話に感動して、思わず泣いてしもうた。この実は、儂が泣いた時にしか落ちないんじゃ。儂は滅多に泣かないから、実を落とすのなんて何十年ぶりか……)

(何十年!? そんなに成ったままで、腐らないのか!?)

(腐らんよ。それどころか、熟成されて更に美味くなる。特別な実じゃからな)

(確かに特別だな! 地面に落ちたのに全然割れてないもん! 柔らかそうなのに……)

(当たり前だ。こやつらは、儂の分身のようなものじゃからな。そんなに柔ではないわ。だが、有機物からの刺激には弱いんじゃ。触ってみろ)


 オレは、言われた通りに落ちた実をつついてみる。

 地面に落ちても割れなかったのに、それは簡単に割れた。

 中から流れ出した液体を、オレはペロリと舐める。


(……うっっっっっまぁ~い!! こんなにおいしいもの、オレ食べたことない!)

(そうじゃろう。そうじゃろう)

(これ、みんなにも食べさせてやりたい! 持って帰ってもいいか!?)

(……みんなとは、先程話してくれたシンやその仲間たちのことか?)

(あぁ! そうだ!)

(……よかろう。素敵な話を聞かせてくれたお礼じゃ。好きなだけ持って帰るがよい)

(本当か!? やったー! ありがとう!)


 オレは、スキップをしながら実を拾い集める。


(実と一緒に、葉っぱも落ちているじゃろう。それに包んで運ぶといい)

(確かに、こうすると楽だな!)


 大きな葉っぱに実を乗せると、オレはそれを首に括り付けた。

 うん、これならみんなのところまで無事に運べそうだ!


(こんなにたくさんくれて、ありがとな!)

(いいんじゃよ。お前の話は、とても興味深かったからのう)

(また遊びに来てもいいか?)

(……恐らく、それは無理じゃろう)

(なんでだ!?)

(お前は、儂の甘い香りを辿ってここまで来たんだろう?)

(そうだぞ!)

(その香りは、全て実から発せられるものだ。しかし、儂は泣いて全ての実を落としてしまった。これじゃあ、香りを辿ってくるのは無理な話というわけじゃ)

(じゃあ、次に実がなるのはいつなんだ? また甘いニオイがしたら来るから!)

(さあ、五年後か十年後か……。詳しいことは、儂自身にも分からん)

(そうなのか……。でも、また実は成るんだよな!? それならオレ、絶対ここに来る!)

(……わかった。そこまで言ってくれるなら、待っておるよ)

(おう! 待っててくれ! オレの名前はぱかお! 今度来た時は、お前の話と一緒に名前も教えてくれ! だから今は言わなくていいぞ!)

(……ぱかおか。よい名じゃな)

(シンがくれた、大切な名前だからな! じゃあオレ、そろそろ行くぞ! またな!)

(……ああ、また会おう。小さなアルパカの子よ……!)


 オレは、今度はシンのニオイを辿って走り出す。

 すっかり遅くなっちゃったから、急いで帰らないとな!

 オレが森を出るまで、ずーっと見送ってくれてるような気配がしたぞ!

 ま、オレの気のせいかもしれないけど!

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