また絶対に会おうな!
(……というわけだ!)
(な、なんていい話なんじゃ~……!)
(え!?)
オレが話し終わると、急にはちみつの実が木からボロボロと落ちてきた。
それはまるで、涙みたいで……。
(……もしかして、泣いてるのか?)
(ああ。お前の話に感動して、思わず泣いてしもうた。この実は、儂が泣いた時にしか落ちないんじゃ。儂は滅多に泣かないから、実を落とすのなんて何十年ぶりか……)
(何十年!? そんなに成ったままで、腐らないのか!?)
(腐らんよ。それどころか、熟成されて更に美味くなる。特別な実じゃからな)
(確かに特別だな! 地面に落ちたのに全然割れてないもん! 柔らかそうなのに……)
(当たり前だ。こやつらは、儂の分身のようなものじゃからな。そんなに柔ではないわ。だが、有機物からの刺激には弱いんじゃ。触ってみろ)
オレは、言われた通りに落ちた実をつついてみる。
地面に落ちても割れなかったのに、それは簡単に割れた。
中から流れ出した液体を、オレはペロリと舐める。
(……うっっっっっまぁ~い!! こんなにおいしいもの、オレ食べたことない!)
(そうじゃろう。そうじゃろう)
(これ、みんなにも食べさせてやりたい! 持って帰ってもいいか!?)
(……みんなとは、先程話してくれたシンやその仲間たちのことか?)
(あぁ! そうだ!)
(……よかろう。素敵な話を聞かせてくれたお礼じゃ。好きなだけ持って帰るがよい)
(本当か!? やったー! ありがとう!)
オレは、スキップをしながら実を拾い集める。
(実と一緒に、葉っぱも落ちているじゃろう。それに包んで運ぶといい)
(確かに、こうすると楽だな!)
大きな葉っぱに実を乗せると、オレはそれを首に括り付けた。
うん、これならみんなのところまで無事に運べそうだ!
(こんなにたくさんくれて、ありがとな!)
(いいんじゃよ。お前の話は、とても興味深かったからのう)
(また遊びに来てもいいか?)
(……恐らく、それは無理じゃろう)
(なんでだ!?)
(お前は、儂の甘い香りを辿ってここまで来たんだろう?)
(そうだぞ!)
(その香りは、全て実から発せられるものだ。しかし、儂は泣いて全ての実を落としてしまった。これじゃあ、香りを辿ってくるのは無理な話というわけじゃ)
(じゃあ、次に実がなるのはいつなんだ? また甘いニオイがしたら来るから!)
(さあ、五年後か十年後か……。詳しいことは、儂自身にも分からん)
(そうなのか……。でも、また実は成るんだよな!? それならオレ、絶対ここに来る!)
(……わかった。そこまで言ってくれるなら、待っておるよ)
(おう! 待っててくれ! オレの名前はぱかお! 今度来た時は、お前の話と一緒に名前も教えてくれ! だから今は言わなくていいぞ!)
(……ぱかおか。よい名じゃな)
(シンがくれた、大切な名前だからな! じゃあオレ、そろそろ行くぞ! またな!)
(……ああ、また会おう。小さなアルパカの子よ……!)
オレは、今度はシンのニオイを辿って走り出す。
すっかり遅くなっちゃったから、急いで帰らないとな!
オレが森を出るまで、ずーっと見送ってくれてるような気配がしたぞ!
ま、オレの気のせいかもしれないけど!