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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十話 イベリスの誘惑
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不思議な出会いだ!

(……すごい! はちみつが成ってる!)


 オレの目に映る木には、はちみつが成っていた。

 はちの巣じゃないぞ!

 はちみつそのものが実として成ってるんだ!

 ドロドロのはずなのに、どうして落ちてこないんだ?

 不思議に思いながら、その木に近付く。


(……ほほう。このような所にアルパカの子とは、珍しい)


 突然オレの耳に、しゃがれた声が届いた。


(だ、誰だ!? どこにいる!?)

(どこと言われてものう……。お前の目の前におるじゃろう)

(嘘つけ! オレの前には木しか……!)

(その木が儂じゃよ。まあ、信じられないかもしれんがのう)


 ……周りに、他の生き物の気配はない。

 ほ、ほんとに木が話してるんだ!!


(すごい! オレ、しゃべる木なんて初めてだ!)

(基本的に、儂らの声はお前たちには届かんからな)

(そうなのか? じゃあ、どうして今話せてるんだ?)

(……恐らく、お前が特別だからじゃろう)

(特別? 何が特別なんだ?)

(そこまでは儂にはわからん。しかし、アルジャンアルパガというだけで他の動物よりも高貴な身である。そこに何かの要素が加わり、儂の声が聞こえるようになったんじゃろう)

(……よくわかんないぞ! どうしてお前の声だけ聞こえるんだ? 他の草や花の声は全然聞こえないのに!)

(それは、お前と同様に儂も特別だからじゃ)

(ふーん、そうなのか!)

(そうじゃ)


 ここで、急に木は静かになった。

 なんとなく、視線を感じるような……?


(……そのような高貴な身でありながら、どうしてニンゲンに飼われている)

(オレがニンゲンに飼われてるって、どうしてわかったんだ?)

(その服を見れば分かる。それは、ニンゲンに着せられたものじゃろう)


 はちみつの木がざわつき始める。

 悲しんでるような、怒ってるような、とにかくあんまりいい感じじゃない。


(ニンゲンは敵じゃ。儂らの領地を奪い、仲間を攫っていく)

(……お前は、ニンゲンに酷い目に遭わされてきたんだな)

(そうじゃ。それなのにどうしてお前は、ニンゲンに従う? 脅されているのか?)

(違う! オレは、みんなのことが好きだから一緒に暮らしてるんだ!)

(ニンゲンのことが好き、だと……?)

(そうだ!)

(……興味深い話をする子じゃのう。もう少し、詳しく聞かせてはくれないか)

(わかった! あれは……)


 オレは、シンとの出会いについて話した。

 ニンゲンが、みんないいヤツじゃないっていうのはちゃんと分かってる。

 でも、シンたちはそんなヤツらとは違う!

 それをどうしても分かってほしくて、オレは一生懸命説明したんだ!

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