不思議な出会いだ!
(……すごい! はちみつが成ってる!)
オレの目に映る木には、はちみつが成っていた。
はちの巣じゃないぞ!
はちみつそのものが実として成ってるんだ!
ドロドロのはずなのに、どうして落ちてこないんだ?
不思議に思いながら、その木に近付く。
(……ほほう。このような所にアルパカの子とは、珍しい)
突然オレの耳に、しゃがれた声が届いた。
(だ、誰だ!? どこにいる!?)
(どこと言われてものう……。お前の目の前におるじゃろう)
(嘘つけ! オレの前には木しか……!)
(その木が儂じゃよ。まあ、信じられないかもしれんがのう)
……周りに、他の生き物の気配はない。
ほ、ほんとに木が話してるんだ!!
(すごい! オレ、しゃべる木なんて初めてだ!)
(基本的に、儂らの声はお前たちには届かんからな)
(そうなのか? じゃあ、どうして今話せてるんだ?)
(……恐らく、お前が特別だからじゃろう)
(特別? 何が特別なんだ?)
(そこまでは儂にはわからん。しかし、アルジャンアルパガというだけで他の動物よりも高貴な身である。そこに何かの要素が加わり、儂の声が聞こえるようになったんじゃろう)
(……よくわかんないぞ! どうしてお前の声だけ聞こえるんだ? 他の草や花の声は全然聞こえないのに!)
(それは、お前と同様に儂も特別だからじゃ)
(ふーん、そうなのか!)
(そうじゃ)
ここで、急に木は静かになった。
なんとなく、視線を感じるような……?
(……そのような高貴な身でありながら、どうしてニンゲンに飼われている)
(オレがニンゲンに飼われてるって、どうしてわかったんだ?)
(その服を見れば分かる。それは、ニンゲンに着せられたものじゃろう)
はちみつの木がざわつき始める。
悲しんでるような、怒ってるような、とにかくあんまりいい感じじゃない。
(ニンゲンは敵じゃ。儂らの領地を奪い、仲間を攫っていく)
(……お前は、ニンゲンに酷い目に遭わされてきたんだな)
(そうじゃ。それなのにどうしてお前は、ニンゲンに従う? 脅されているのか?)
(違う! オレは、みんなのことが好きだから一緒に暮らしてるんだ!)
(ニンゲンのことが好き、だと……?)
(そうだ!)
(……興味深い話をする子じゃのう。もう少し、詳しく聞かせてはくれないか)
(わかった! あれは……)
オレは、シンとの出会いについて話した。
ニンゲンが、みんないいヤツじゃないっていうのはちゃんと分かってる。
でも、シンたちはそんなヤツらとは違う!
それをどうしても分かってほしくて、オレは一生懸命説明したんだ!