男を見せるぞ!
甘いニオイを辿っていくと、森に着いた。
(森かぁ……。うぅ、入りたくない……)
……森は、オレがニンゲンに狙われた場所だ。
それがトラウマになってるみたいで、オレの体は動かなくなってしまった。
その間も、甘いニオイはオレの鼻をくすぐる。
(……いや、オレはこのニオイが何か突き止めるって決めたんだ! こんな所で立ち止まってる場合じゃないぞ! 突撃だー!!)
オレは、なんとか足を動かして森の中に駆け込んだ。
……好奇心と食欲が、恐怖心に勝ったんだな!!
それに、オレにとって森は怖いだけの場所じゃない。
シンと出会った、大切な場所でもあるんだ!
あの時は、シンの勇気がオレを守ってくれた。
今度は、オレが男を見せる番だぜ!!
オレは、ニオイの方向へひたすら走る。
枝に引っ掛けたり、地面に擦っちゃったりしたから、自慢の毛はすっかりボロボロだ。
すっごく嫌だけど、ここまで来たら後には引けないからな!
早くニオイの正体を突き止めて、みんなの所に帰るんだ!
シンにお風呂に入れてもらって、ハヤテにブラッシングしてもらおう!
そんなことを考えながら走っていると、見たこともない木の前に辿り着いたんだ――――――――――。