もう我慢できない!
さいみつ体験の後は、移動してろうそく作りをやることになったぞ!
オレは参加できないから、みんなのを見て回ってるんだ!
こういうのって、個性が出るから面白いよな!
不器用なコウタのはボコボコだけど、几帳面なシュウヘイのはまっすぐだ!
でも、一番すごいのはソウイチロウだな!
ソウイチロウは見かけによらず、手先が器用なんだぜ!
まるで売り物みたいに、キレイに飾り付けてる!
(あれ……? このニオイ、なんだ……?)
みんなのろうそくを見ていると、オレの鼻にすっごくいいニオイが届く。
さっき食べたはちみつよりも甘くて、濃くて……。
とにかく、とってもいいニオイなんだ!
(シン! シン! いいニオイだな! 見に行ってみないか!?)
鼻のいいシンなら気付くと思って声をかけたんだけど……。
「………………………………」
シンは、こっちを振り向きもしない。
目の前のろうそくに集中して、オレの声もいいニオイも届いてないみたいだ。
……そうだ、シンってこういう奴だったよな。
集中力がすごいから、その間は周りの声が聞こえなくなるんだっけ……。
(シン! おーい! こんなにいいニオイなのに、なんで気付かないんだよー!)
諦めずに声をかけたけど、シンが気付いてくれる気配はない……。
どこからこんなにいいニオイがするのか、気になるのに……!
(……もう我慢できない! オレ、見に行ってくる! ちゃんと声はかけたからな!)
痺れを切らしたオレは、最後に一言かけるとその場を離れた。
このいいニオイの出所を突き止めてやるぜ!
こうしてオレは、甘いニオイに釣られて走り出したのだった。