最悪の出会い
あの後、俺は誘拐が行われたと思われる場所へと急いだ。
そこには多くの野次馬や軍人が集まっていて、現場を一目見るだけでも大変だったぜ。
……行ってはみたものの、今の俺にできることなんて何もねぇ。
ここにいるよりは、家でテレビでも見てた方が情報も集まるかもしれねーな……。
俺は、肩を落としながら家路についた。
誘拐犯が近くに潜んでいる可能性も捨てきれず、周囲を見回りながら歩く。
……ま、なんもなかったけどな。
家が近付くと、俺はあることに気付いた。
……門の前に、誰かいる。
目を凝らしてみると、それは大和と知らない女で……。
まさか、誘拐犯じゃねーだろうな……!?
俺は急いで、二人に駆け寄った。
そして、大和を抱き上げてから女に詰め寄る。
「あんた、誰だ……!」
その女は、見たこともないくらい綺麗な女だった。
誘拐をするような奴には見えねーけど、気は抜けねぇ……!
「大和くん、お兄ちゃん帰ってきてよかったね」
女は俺の問い掛けには答えず、大和に柔らかな笑みを向ける。
大和は、嬉しそうに頷いた。
……俺、誰が来ても絶対にドアを開けるなってさっき言ったよな。
それなのに、こいつはドアを開けて外に出て、不審な女と二人で話してた。
何かあったら、どうするつもりなんだよ……!!
俺の怒りの矛先が、大切な弟へと向く。
「……兄ちゃん、誰が来てもドアを開けるなって言ったよな。それなのになんで……!」
「お兄さん、落ち着いてください。大和くん、怖がっていますよ」
俺の言葉は、不審な女によって遮られた。
目の前の大和は、今にも涙を零しそうだった。
……そうだよな。
俺が大和に怒ったことなんて、今までなかったもんな……。
……元はといえば、大和を置いて勝手に突っ走ったことが原因なのに。
それに、大和が何の理由もなしに俺の言いつけを破るはずがねえ。
ちょっと考えればわかることなのに、俺は……!
「……大和、急に怒鳴ったりしてごめんな。兄ちゃんが悪かった。どうしてドアを開けたのか、教えてくれるか?」
「長くなりそうだから、それは私からさせてもらえませんか? 不審な者ではないという証明のために、私の身分を明かしておきます。私の名前は、一色透花。王様から役職を授かり、王都で軍の隊長を務めています」
これが、俺とこいつとの出会いだった――――――――――。