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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十九話 ミソハギと共に走る
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普通の日々にサヨナラ

 俺は、ごく普通の家庭に生まれて、ごく普通に育った。

 他の人と違うことといえば、歳の離れた弟がいることくらいだ。

 ……ぶっちゃけ昔の俺は、今と違って大和の面倒なんて全然見てなかった。

 社会人になって、一人暮らしを始めてからできた弟だったんだ。

 弟の顔を見るためにわざわざ実家に顔を出すなんて、そうはしねぇよ。

 平日は仕事が忙しかったし、休日には色々付き合いもあったしな。

 酒も飲むし、タバコも吸う。

 俺は、どこにでもいるような普通の男だったんだ。

 あの日、職場に軍の奴らが来るまではな――――――――――。


「は……? 親父とお袋が殺された……!?」


 この頃、無差別の児童誘拐事件が世間を賑わしていた。

 身代金の要求などはなく、まるで神隠しのように消えてしまうらしい。

 広い地域で被害が続出したため、単独ではなく組織での犯行だと考えられていた。

 軍も必死に犯人を捜してはいたが、その尻尾さえ捕まえられないという状況だった。

 ……親父とお袋は、大和と三人で散歩をしていて偶然その現場を目撃したのだ。

 正義感の強い人だったので、恐らく犯人に詰め寄ったのだろう。

 そして、そのまま刺され帰らぬ人に……。

 通報を受けて軍が到着した時には、二人は既に息絶えていたそうだ。

 ……お袋の腕の中では、大和が泣いてたんだってよ。

 この子だけは絶対に守るんだと、必死に抱き込んだんだろうな……。

 そのせいか、大和には傷一つついていなかった。

 目撃者がいたわけじゃなかったので、これは全て軍の推理だ。

 本当は誘拐事件なんて関係なく、通り魔による犯行だったのかもしれない。

 だけど、何日経っても、何か月経っても犯人は逮捕されない。

 その日のターゲットだった子も、そのまま戻ってこなかった。

 ……俺の中で、疑惑が確信へと変わる。

 犯人は、連続誘拐犯で間違いない。

 このまま、何もしないで犯人逮捕を待つなんて俺にはできない。

 自分の手で、両親を殺した奴らを捕まえたい……!

 そのためにはどうすればいいのか、俺は必死に考えた。

 そして、自分も軍人になるという結論に辿り着く。

 軍人になれば、機密情報も手に入るかもしれない。

 運が良ければ、誘拐事件を取り扱ってる隊に配属されることだってあるだろう。

 俺は、親父とお袋の墓の前で誓った。

 絶対に、この手で犯人を捕まえてみせるってな。

 ……でもまあ、現実はそんなに甘くねーんだわ。

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