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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十九話 ミソハギと共に走る
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人の数だけ歴史があるものだ

 部長に連れられて入ったのは、とあるビアガーデンだった。

 まだ昼間だというのに、多くの人で賑わっている。


「……ここって、ビアガーデンすよね」

「うん、そうだよ」

「俺、一杯だけ飲んだら帰るって言ったはずなんすけど……」


 ビアガーデンというものは、時間内なら飲み食い自由の場所だったはずだ。

 一杯だけ飲んで帰るような真似をする奴は、まずいないだろう。

 ……こりゃ、ハメられたな。


「ここが真っ先に目に入ったんだよ。他のお店を探す時間が勿体ないだろう? タイムイズマネー、時は金なりっていうからね」

「はあ……。まあ、もう金も払っちまったんで付き合いますけど……」

「ありがとう! ちなみにこのお店は時間無制限みたいだから、僕のことは気にしないで好きな時に帰っていいからね。じゃあ早速、飲み物と食べ物を取りに行こうか!」

「うす」


 俺たちは、ビールで乾杯をした。

 適当に持ってきたつまみを食べながら、休暇中の近況報告をする。


「ごほっ、ごほっ……」

「大丈夫すか?」

「ああ、うん、大丈夫だよ。ちょっとむせただけだから」


 話をしていると、部長が急に咳き込んだ。

 どうやら、隣の席のタバコの煙を吸ったせいみてーだ。


「部長、席変わりますか? こっちの方が煙こないっすよ」

「いいのかい? じゃあ、お言葉に甘えてさせてもらうよ。家族も誰も吸わないからか、タバコの香りには馴染みがなくてね……。柏木くんは平気なの?」

「うす。俺、昔は喫煙者だったんで」

「……え!?!?」


 俺と席を交換した部長は、驚いたように目を見開いている。


「……そんなに驚くことすか?」

「めっっっっっちゃくちゃ驚いたよ! だって君、体に悪そうなことはしなそうなのに!」

「まあ、昔の話すからね。今は吸ってないですし」

「いやー、意外だった! 毎日一緒に練習してても、知らないこともあるものだね!」


 この後も俺たちは、酒を飲みながらグダグダと色々なことを話した。

 屋敷の奴ら以外とこんな時間を過ごしたのは久しぶりだった。

 ……正直、楽しいかも。

 そのせいか、うっかり飲み過ぎちまったんだよな……。

 いつもみたいに、春原特製の酔い防止の薬も飲んでねーし……。


「そういえば、柏木くんはどうやって一色隊の一員になったの? 一色隊って、他の隊と違って入隊試験もないし、追加の隊員募集もしてないって聞いたからさ」

「……別に、面白い話じゃないすけど」

「それでもいいよー! 興味があるから、よかったら聞かせて!」

「わかりました……」


 アルコールでふわふわしている俺は、自分の過去について話し始めた――――――――――。

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