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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十九話 ミソハギと共に走る
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たまには、な。

「……くそっ! 負けた!」

「ふう、危なかった。あと五十メートルホテルが遠かったら、僕が負けてたかもしれないよ」


 ……今日も負けた。

 でも、手応えはある。

 確実に差は縮まってるから、あと何回かやれば勝てるかもしれねーな。

 ……まあ、それまでは負けが増え続けるんだけどよ。


「いやー、暑いね! 柏木くん、この後暇? 一杯やってかない?」


 部長は、何かを飲むような動作をする。


「……一杯って、まさか酒すか?」

「うん! これだけ汗かいたから、ビールが美味しいと思うんだよね!」

「……部長、家族旅行って言ってませんでしたっけ? いいんすか? 戻らなくて」

「実は僕、置いてかれちゃったんだよね~」

「……はい?」

「この近くにテーマパークがあるじゃない? 僕以外の家族は、そこに遊びに行ってるんだ。この時期は混むから、入場制限があるらしくてさ。チケットが三枚しか取れなかったんだって。両親と弟が行くことになって、僕は暇ってわけさ」

「……そうだったんすか。でも俺、弟と約束があるんで……」

「えー! 柏木くん、いっつもそうじゃない! たまには付き合ってほしいなぁ」


 ……確かに俺は、部長や部員たちからの飲みや食事の誘いをいつも断っていた。

 そんな時間があれば、少しでも長く大和の傍にいてやりたい。

 ……大和の笑顔が見られるのが、俺にとって何よりの幸せなんだ。


「それに、まだ午前中だよ! ちょっと飲んでから帰っても、時間はたっぷりあるからさ!」

「……そうすね。じゃあ、一杯だけなら……」


 部長の言葉も尤もだと思ったので、俺は飲みの誘いに乗ることにした。

 屋敷のみんなで宅飲みはあるけど、外で飲むのなんて久しぶりだな……。


「ほんとに!? よし、柏木くんの気が変わらないうちに行こう!」

「それにしても、こんな真っ昼間から開いてる店なんてあるんすか?」

「大丈夫だよ! ここは観光地だし、何より今は夏休みだからね!」


 部長は、爽やかな笑顔を浮かべると人通りが多い方へ向かっていく。

 俺も、その後を追って歩き出した。

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