一色隊の筋肉アニキ、柏木蒼一朗
適正試験は二日間に渡って行われる。
一日目に体力、情報処理能力、医学・薬学、二日目に戦闘能力、騎馬能力、コミュニケーション能力を試すテストを受けなければならない。
なかなかにハードだが、皆本気で臨まざるを得ない。
なぜなら、この試験でそれぞれ専門部隊に見初められると晴れてそこに入隊、どこにも声をかけられなければ雑用部隊に回されるからだ。
まずは一日目の午前中の体力測定だが、一色隊のとある男が周囲の野次も静まらざるを得ないほどの好成績を収めていた。
「あ、あいつどんな体してんだよ……!」
「シャトルラン二百回とか信じられねぇ……!」
「くっそ……! 最高回数までいけなかった……!」
「すごいですよ、蒼一朗さん。僕なんて十回いきませんでした……」
「まぁ、お前は仕方ないだろ、ハル。数日前まで寝込んでたんだし、元々体弱いしな。それよりも二階堂と春原、お前らはもうちょっとできたんじゃねーの? 手抜いてるように見えたけど」
「僕の得意分野はこの後だからね。そのための温存だよ」
「……走るとか、疲れるだけだろう」
「なんでも本気でやれよ。手抜くとか、そういうのかっこ悪いだろ」
体力テスト総合成績一位、柏木蒼一朗。
若干柔軟性にかける面はあるものの、素晴らしい成績を残した。
「あの柏木って男、俺らの隊に欲しかったな」
「そうっすね。鍛えれば相当強くなりますよ、あいつ」
肉弾戦専門部隊の隊員に目をかけられるほどである。
一日目午前中の試験はこれで終わりだ。
お昼休憩を挟んで、午後の試験が始まる。