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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十九話 ミソハギと共に走る
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いつもと少しだけ違う朝

「あれ? 蒼一朗さんは~?」

「走りに行ったよ」

「え!? 今日も!?」

「うん。一日でも休むと体が鈍っちゃうからって」

「ほんと、頑張るよね~」

「虹太くんだって同じだと思うけどなぁ。こっちに来てからも毎日ピアノ弾いているし」

「確かにそうかも~。ピアノがある別荘でよかったよ。透花さん、ありがとね☆」

「いえいえ、どういたしまして」






 俺は、夏季休暇になってからも毎日のランニングを欠かさなかった。

 いまだにあいつどころか、部長にも勝てねーからな……。


(今日はちょっと、距離を伸ばしてみるか……)


 いつものコースを終えたが、まだ走り足りない。

 そう思った俺は、いつもは通らない道へと足を踏み入れる。

 しばらく走っていると、見慣れた背中を視界に捉えた。


(まさかこんなとこで会うわけないよな……。でも、あのペースで走れる奴なんて……)


 スピードを上げて横に並び、不自然にならないように顔を確認する。

 それは、俺のよく知るものだった。


「……部長、お久しぶりっす」

「あれ? 柏木くんじゃないか! こんな所で何してるの?」

「俺の隊、この近くの別荘で休暇を過ごしてるんすよ。部長こそ、どうしてここに?」

「家族旅行で、この近くにホテルをとってるんだ。なんとか休みをもぎ取れたからね」

「あー、そうなんすか……」


 ……俺は、正直気まずい気持ちでいっぱいだった。

 こんな長期の休みなんて、普通だったらまず貰えないからな。

 俺が休んでる間にも、働いてる奴らがいる。

 ……それは、部も同じだ。

 休暇中は拠点をこっちに移したから、練習にも全く行けてねぇ……。

 毎日、走ってはいるけどよ……。

 だが、部長はそんなことなどまるで気にしてないようだった。


「それにしても偶然だね! そうだ、柏木くん、久しぶりに勝負しない?」


 いつものように、俺に勝負を持ち掛けてくる。


「……もちろん、いいっすよ」

「やった! じゃあ、道なりに行くと大きなホテルがあるから、そこまででいい?」

「うす」

「じゃあ、レディ、ゴー!!」


 こうして俺たちは、夏の日差しが照り付ける中走り出したのだった――――――――――。

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