橙色の光に包まれながら、ゆっくり歩こう。
「……透花さん、ありがとうございます。もう大丈夫です」
透花さんとの出逢いを思い出していると、いつの間にか震えは止まっていました。
僕はゆっくりと手を離すと、彼女と向き合います。
その瞳は、どこまでも真っ直ぐだけれど慈愛に満ちていて……。
こうやって見ているだけで、元気が出てくる気がするんです。
「透花さんのおかげで、体調もよくなりましたよ」
「それならよかった。じゃあ、風が冷たくなる前に帰ろうか」
「はい」
僕たちは、並んでゆっくり歩きます。
透花さんは、時々打ち寄せる波に近付き戯れていました。
……でも、さっきみたいにその行動を止めるようなことはしません。
透花さんは、何があってもきちんと戻ってきてくれます。
そして、柔らかな声で僕の名前を呼びながら、手を握ってくれるんです。
根拠なんてありませんが、そんな風に思えました。
(透花さん、僕のことを助けてくれてありがとうございます。僕はあなたが、あなたの率いるこの隊が大好きです。変わらず頑張りますので、これからも僕の料理を食べて笑顔になってくれるととても嬉しいです)
……こんなこと、恥ずかしくてとても口には出せません。
「……ハルくん、やっぱり体調悪い? 顔が赤い気がするのだけれど……」
「い、いいえっ! なんでもないです! 夕日のせいだと思います!」
「そう? 気分が悪くなったらすぐに言ってね」
「はい。……あの、綺麗ですね」
「うん。すごく綺麗な夕日だよね」
僕の故郷で見る夕日も、とても美しいんです。
今の僕には、まだ勇気が足りないので無理ですけど……。
(いつか、透花さんと一緒に見れたらいいな……)
そんな想いを抱えながら、目を細めてオレンジ色の光を見つめます。
美しく雄大なそれは、まるで僕を安心させるように佇んでいたのでした――――――――――。