その温かさがうらやましい
柊平さんと蒼一朗さんによって無事に救助された透花さんは、僕の自宅に運ばれました。
意識は失っているものの命に別条はなかったので、医師である理玖さんが病院に運ぶ必要はないと判断したからです。
……僕が自宅を提供したのは、せめてもの罪滅ぼしのつもりでした。
幸い、両親はまだ戻ってきていなかったので……。
透花さんは、一時間ほどで目を覚ましました。
「あれ、ここって……」
「……君が、さっき助けた人の家だよ」
「……そっか。私、あのまま海に落ちたんだ」
「……隊長、ご無事で何よりです」
「ったく、泳げないならあんな無茶するなよな! 心臓止まるかと思ったぜ……」
「二人が助けてくれたんだよね。ありがとう。理玖も、処置とかありがとうね」
彼女たちを、とても温かな空気が包みます。
何かあったら、自分の大切な人たちに心配してもらえる……。
そんな当たり前のことが、とてもうらやましくて……。
僕は、自分の涙腺が緩んでいくのを感じました。
だって僕は、もうそれを失ってしまったんですから……。
「……あなたは? 怪我はなかった?」
「え……? あ、はい……」
「それならよかった」
そう言うと、透花さんはふわりと笑いました。
どうして、こんなに穏やかな笑顔を浮かべていられるんでしょう?
だって、僕のせいで海に落ちたのに……。
罵られても、当たり前のことをしたのに……!
……透花さんだけじゃ、ありません。
柊平さんも蒼一朗さんも理玖さんも、一言も僕を責めるようなことは言いませんでした。
どうして、なんで……?
僕の思考は、あっという間に混乱の渦に巻き込まれていきました――――――――――。