一人にしないで
二人の葬儀には、とてもたくさんの人が訪れました。
おじいちゃんとおばあちゃんが、多くの人に慕われていたのがわかります。
僕は、泣きませんでした。
父と母に、どうしても涙を見せたくないと思ったからです。
葬儀が終わると、着替えることもせずにとある場所に向かいました。
(さすがに、高いですね……)
……そこは、観光名所にもなっている崖です。
一人になると、自然と涙が僕の頬を濡らします。
(おじいちゃん、おばあちゃん、僕も連れて行ってください……!)
……僕は、自らの命を絶つためにここまで来ました。
僕はこのまま、親が選んだ相手と結婚させられるのでしょう。
今後も、操り人形のように生きていくしかないんですよね。
だって、何かを変える力も、覚悟もないんですから……。
……それに、僕の料理を食べて笑ってくれる人たちは、もうどこにもいません。
もう、生きている意味なんてありません。
生きていなくなんて、ありません……!
そう思った僕は、あと一歩進めば身を投げ出せる位置まで進みます。
……遺書は、残しません。
どのような形であれ、僕の言葉が両親に届くことはないですから。
「どうかなされたんですか?」
そんな僕に、柔らかな声をかける人物がいました。
これが、僕と透花さんの出逢いです――――――――――。