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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十八話 セロシアに火を灯そう
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落命

 それは、本当に突然の出来事でした――――――――――。


「おじいちゃんとおばあちゃんが……?」

「……ええ。車に乗っている時に事故に遭ってね、即死だったそうよ」


 僕は、母から告げられた言葉をうまく飲み込むことができませんでした。

 昨日まで、あんなに元気だったのに……?

 僕の料理を食べて、笑ってくれていたのに……?


「……ふん。これで邪魔者はいなくなったな」

「……そうね。晴久、立派な後継者になるために頑張りましょう!」


 ……次の瞬間に両親が発した言葉を、僕は一生忘れることはないでしょう。


「ふ、二人とも何を言ってるんですか……!?」

「言葉の通りだ。お前もとっくに成人していることだし、そろそろ結婚させるぞ」

「晴久、安心してちょうだい。あなたにぴったりな女性を、私たちが選んであげるからね!」


 ……この人たちは、何を言っているんでしょう?


「待ってください……! 二人が亡くなったばかりなのに、そんなの……!」

「これ以上待てるか! お前は、俺の言うことを聞いていればいいんだ!」

「何も心配することないのよ。私たちに任せておけばいいの」


 父は、いつものように顔を真っ赤にさせて僕を起こりました。

 母は、歪んだ笑顔を浮かべながらこちらを見ています。

 父に怒鳴られる度に、母親の何かが壊れていくのは感じていました。

 だけど、まさかこんなことになっていたなんて、僕は気付かなかったんです。

 ……自分のことに精いっぱいで、気付こうともしなかったんです。


「通夜は今夜、葬儀は明日だ。お前の結婚式は、一ヶ月後に行う。そんなにこの家を継ぐのが嫌なら、逃げ出せばいいだろう? お前はもう、子どもじゃないんだ」


 ……父は、全てを分かっていてこんなことを言うんです。

 この町から出たこともない僕に、そんな覚悟があるわけないと。

 体の弱い僕が、別の場所で生きるなんてできるわけがないと。

 ……たった一つの拠り所を失ってしまった僕には、もう選べる道は一つだけです。

 僕は葬儀の日、もう動かなくなってしまったおじいちゃんとおばあちゃんに、手を合わせてあることを報告しました。

 二人とも、僕の理解者だったからわかってくれますよね……?

 ……もう、僕にはこれしかないんですから――――――――――。

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