決戦前夜
屋敷に帰宅してから、透花は問い詰められることになる。
「透花さん、先程の言葉は……」
「そんな不安そうな顔しないでも大丈夫だよ、ハルくん。明日と明後日の試験で、みんながちょこっといい成績を残してくれればいいだけだから」
明日から二日間にかけて、新入隊員の適性を見極めるための様々な試験が行われるのだ。
その結果を受けて、それぞれの隊に配属される。
既に一色隊に所属している彼らにとってはただの力試しになるのだが、それで優れた成績を残してきてほしいと彼女は言っているらしい。
「目標は、各科目でうちの隊から成績上位五名以内に一人は入ること! 自分が得意な分野だけ頑張ればいいから、そこまで難しいことでもないでしょう?」
「俺は、全く自信がないっす……!」
「僕も……」
「うーん、俺もだなぁ」
「僕も、特に得意分野などないので……」
不安そうな声を漏らしたのは、颯、心、虹太、晴久の四人だ。
透花は彼らの心配を拭い去るように、明るい笑顔を見せる。
「四人は自分で気付いていないだけで才能に溢れているから大丈夫だよ! 私が保証する。別の用事が私にはあるし、柊平さんは試験を受けないので明日みんなをまとめるのは蒼一朗さんにお願いするね」
「それはいいけどよ、お前はなんで受けねーの?」
「私はこの隊に所属する前も、軍人として働いていたからな。その時にこの類の試験は全て受けてあるんだ」
「なるほどな。了解」
「よし、決まりね! じゃあ今日は、明日に備えてゆっくり休もう。頼んだぞ、野郎ども!」
透花はそう言ったのだが、翌日の試験に全く自信がない晴久と颯はなかなか寝付けない夜を過ごすことになる。
同じ境遇でも、虹太と心はぐっすりと眠れたようだが。
さて、一色隊の面々は優秀な成績を残し、隊を、そして隊長を馬鹿にした輩を見返すことができるのだろうか。
決戦の時は、刻一刻と近付いていた――――――――――。