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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十七話 水中のジニア
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生還

 透花の視界に飛び込んできたのは、自分を心配そうに覗き込む隊員たちの姿だった。

 彼女は、柊平と蒼一朗によって無事に救助されたのだ。

 現在は、パラソルの下で横たわっているようだ。

 日差しから察するに、先程からあまり時間は経っていないのだろう。

 透花が体を起こそうとすると、それを柊平が支える。


「……ご無理はなさらず」

「……ありがとう。柊平さんが助けてくれたの?」

「……私と柏木が二人で行いました」

「そうだったんだ。蒼一朗さんもありがとう」

「ったく、あんたなぁ……。泳げないんだから、もっと浜辺とかであそ……」

「透花さん……!」


 蒼一朗の言葉を遮ったのは、晴久だった。

 そのまま、透花に抱き付く。

 彼の予想外の行動に、透花が泳げないことを知らなかった面々は目を見張る。

 柊平、蒼一朗、理玖の三人は神妙な顔つきをしていた。


「僕、僕……!」

「……ハルくんにも心配かけちゃったね。ごめん」

「もし、透花さんが戻ってこなかったらどうしようって……!」

「……うん」


 透花は抱き締められたまま、未だに震えの止まらない晴久の話を聞いていた。

 彼が少しでも早く落ち着くようにと、頭を撫でている。


「……大丈夫だよ。ちゃんと戻ってきたでしょう?」

「はい……!」

「……何かあっても、私には助けてくれる仲間がいるからね。ハルくんも、その一人だよ」

「はい……」


 徐々に、晴久の震えが止まっていく。


「……少しは落ち着いたかな?」

「はい……。あああっ、すみません! 僕、なんてことを……!」


 平常心を取り戻した晴久は、自らが透花に抱き付いていることに気付く。

 いつもよりも薄着な分、肌の柔らかさを直に感じてしまったようだ。

 真っ赤な顔の晴久は、急いで透花から離れた。

 透花は柔らかく微笑むと、他の皆へと視線を向ける。


「せっかく楽しく遊んでいたのに、水を差してごめんなさい。心配してくれてありがとう」


 それは、いつも通りの彼らのよく知る透花の姿だった。

 その笑顔をきっかけに、張り詰めていた空気が緩むのを感じる。

 こうして透花は、無事にみんなの元へと帰ってきたのだった――――――――――。

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