生還
透花の視界に飛び込んできたのは、自分を心配そうに覗き込む隊員たちの姿だった。
彼女は、柊平と蒼一朗によって無事に救助されたのだ。
現在は、パラソルの下で横たわっているようだ。
日差しから察するに、先程からあまり時間は経っていないのだろう。
透花が体を起こそうとすると、それを柊平が支える。
「……ご無理はなさらず」
「……ありがとう。柊平さんが助けてくれたの?」
「……私と柏木が二人で行いました」
「そうだったんだ。蒼一朗さんもありがとう」
「ったく、あんたなぁ……。泳げないんだから、もっと浜辺とかであそ……」
「透花さん……!」
蒼一朗の言葉を遮ったのは、晴久だった。
そのまま、透花に抱き付く。
彼の予想外の行動に、透花が泳げないことを知らなかった面々は目を見張る。
柊平、蒼一朗、理玖の三人は神妙な顔つきをしていた。
「僕、僕……!」
「……ハルくんにも心配かけちゃったね。ごめん」
「もし、透花さんが戻ってこなかったらどうしようって……!」
「……うん」
透花は抱き締められたまま、未だに震えの止まらない晴久の話を聞いていた。
彼が少しでも早く落ち着くようにと、頭を撫でている。
「……大丈夫だよ。ちゃんと戻ってきたでしょう?」
「はい……!」
「……何かあっても、私には助けてくれる仲間がいるからね。ハルくんも、その一人だよ」
「はい……」
徐々に、晴久の震えが止まっていく。
「……少しは落ち着いたかな?」
「はい……。あああっ、すみません! 僕、なんてことを……!」
平常心を取り戻した晴久は、自らが透花に抱き付いていることに気付く。
いつもよりも薄着な分、肌の柔らかさを直に感じてしまったようだ。
真っ赤な顔の晴久は、急いで透花から離れた。
透花は柔らかく微笑むと、他の皆へと視線を向ける。
「せっかく楽しく遊んでいたのに、水を差してごめんなさい。心配してくれてありがとう」
それは、いつも通りの彼らのよく知る透花の姿だった。
その笑顔をきっかけに、張り詰めていた空気が緩むのを感じる。
こうして透花は、無事にみんなの元へと帰ってきたのだった――――――――――。