沈む
浅瀬で大和、美海と遊んでいた透花は、自分の左足に違和感を覚えた。
どうやら、攣ってしまったようだ。
「……大和くん、美海ちゃん。柊平さんか蒼一朗さんを呼んできてもらえるかな」
「………………………………?」
「どうしたの、とうかねえ」
「ちょっと足が痛くなっちゃって」
「え!? たいへん! ちょっと待ってて! すぐに呼んでくるからね!」
「………………………………!!」
二人は、浜辺にいるであろう柊平と蒼一朗の元へ駆けていく。
その姿を見送ると、透花は足の筋肉をゆっくりと伸ばし始めた。
(まさか、足が攣っちゃうなんて……。情けないけれど、パラソルまで連れて行ってもらって休憩しよう。楽しくて、少しはしゃぎ過ぎちゃったかな)
そんな彼女を、不幸が襲う。
もう片方の足も、痙攣を起こし始めてしまったのだ。
そこに、運悪く大きめの波が押し寄せてきた。
攣った足では耐えることができず、透花の体は波に攫われてしまう。
(まずい……!)
急な出来事だったため、透花は思わず水中で息を吐き出してしまった。
酸素を失ったことにより、意識が徐々に薄れていく。
彼女の体は浮き上がることなく、静かに沈んでいくのみだ。
(水を通して見る空って、こんなに綺麗なんだ……)
こう思ったのを最後に、透花の意識は途絶えたのだった――――――――――。