人の目を奪う眩しさ
透花が皆と合流できたのは、十分ほど後のことだった。
普通に歩けば、一分とかからない距離である。
しかし、今の彼女は水着姿なのだ。
滅多に露わにしない肌を惜しげもなく露出している。
その姿が、砂浜の男たちの目に止まらないはずがない。
彼女に声をかける者は、後を絶たなかった。
一組断れば、すぐに別の男に声をかけられてしまう。
それを見かねた蒼一朗が迎えに来てくれるまで、そのやり取りは十分間続いたのだ。
「蒼一朗さん、ありがとう」
「いや、礼を言われるようなことじゃないだろ。あんたのせいじゃねーし」
「まさか、あんなに声をかけられるなんて思わなかったよ。みんな、暇なんだね」
(暇っつーか、なんつーか……)
蒼一朗は、透花の水着姿に目をやる。
白の水着が、彼女の白皙さを際立たせていた。
いつも彼女と接している蒼一朗でさえ、何か思うところがあるようだ。
「……隊長、失礼いたします。こちらを羽織られていた方がよろしいかと」
そこに、先程透花が脱いだパーカーを持った柊平がやって来た。
駐車スペースが空くのを待っていたため、皆との合流が遅れていたのだ。
「……もちろん日焼け止めを塗られているとは思いますが、日差しも強いことですし」
「そうだな。あんた、泳いだり潜ったりしないだろ。水遊びをするだけなら着とけよ。それ、濡れても平気な素材だよな」
「……はーい、わかりました。二人とも、ありがとう」
正直なところ、暑いのでパーカーを着たくはなった。
だが、彼女は隊員たちの厚意を無駄にするようなことはしないのだ。
パーカーを羽織ろうとしたところで、声がかかる。
「透花さん、パーカー着ちゃうの? せっかく水着似合ってるのに~。ねっ、心ちゃん!」
「……うん」
浅瀬で遊んでいた、虹太と心だった。
近くには、美海、大和、ぱかおもいる。
だが、颯の姿が見当たらない。
「ありがとう、虹太くん、心くん。颯くんはどこに行ったの?」
「颯くんなら一人で遠泳に行ったよ~」
「……ここは、女の人が多いからって」
「あ、なるほど。納得しました」
波打ち際では、若い女性がたくさん遊んでいるのだ。
それに耐え切れなくなった颯は、遠泳をして物理的に距離をとることにしたらしい。
「颯くんが戻ってきたら、スイカ割りとかビーチバレーとかしたいね」
「スイカ……」
「スイカ割りはいいけど、バレーはパス~。指痛めるのやだ!」
「……お前は、絶対にケガするからやめといた方がいいな。春原の仕事が増える」
「砂浜での遊びなら、彼らも参加できますね」
柊平は、パラソルの下に視線を向けた。
三人は、協力して砂で何かを作っているようだ。
おおかた、晴久が二人を誘ったのだろう。
その姿を見ながら、透花は小さく微笑む。
「うん、そうだね」
「とうかねえ、一緒にあそぼー!」
「………………………………!!」
(トウカ、オレもだ! 遊んでくれ!)
「ふふふ、三人ともそんなに慌てなくても大丈夫だよ。今日からしばらくは、いつもと違ってたくさん遊べるんだから」
美海と大和、そしてぱかおに促され透花は水に入る。
燦々と降り注ぐ日差しが、彼女たちを照らしていた。