Summer Vacation!
この日、一色隊は大和、美海を含む全員で海に来ていた。
ぱかおも、きっちりと服を着て砂浜を駆け回っている。
琉生を無事に王宮へ送り届けた功績が認められ、王から長期休暇が与えられたからだ。
夏休みである子どもたちの思い出作りのため、そしてより隊員たちの親睦を深めるために、透花が今回の旅行を企画したのである。
今日は、その初日というわけだ。
既に何人かは水着に着替え、海の中に入っている。
透花はその様子を、水着の上にパーカーを着た状態で見守っていた。
同じパラソルの下には、海で遊ぶのが不似合いである晴久、理玖、湊人の三人がいる。
「ハルくんはともかく、湊人くんと理玖は泳ぎに行かないの?」
「いやー、眼鏡が濡れるのは嫌だからね。僕はここでゲームでもしてるよ」
「……日に当たりたくない」
そう言うと、湊人は携帯ゲーム機を、理玖は本をそれぞれ荷物から取り出す。
元々このインドアな二人は今回の旅行に乗り気ではなかった。
その反対を押し切ってここまで来たため、透花はその行動を咎めることはしない。
「透花さん、僕のことは気にせずに行ってきてください」
「でも、ハルくん暇じゃない? 二人はすっかり自分の世界に入ってしまっているし……」
「大丈夫ですよ。波打ち際を歩いたり、貝殻を探したり、海に入らなくてもできることはたくさんありますから」
晴久は柔和な笑みを浮かべた。
旅行初日から体調を崩すことを考慮して、彼は海に入らないと決めていた。
そんな彼を残していくことが気がかりで、透花もこの場に留まっていたのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
「はい。楽しんできてくださいね」
「ありがとう、ハルくん。じゃあ、行ってきます」
透花はパーカーを脱ぐと、皆が遊んでいる方向へと歩き出したのだった。