表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二話 希望を抱えたトルコキキョウ
18/780

絶対零度の笑顔

 式はつつがなく進んでいき、次は透花によるスピーチである。

 一色隊は以前の入隊式の後にできたので、まだ認知度は低い。

 そのため今回は、隊長である透花のスピーチが行われることになったのだ。

 彼女が壇上に上がると、あからさまに場内がざわつき始める。


「あれが噂の一色透花か」

「王様のお気に入りで、隊長に抜擢されたって奴だろ?」

「はぁ? 何それ。そんなんで隊長になれんの?」

「あんな女に何ができるっていうんだよ」


「あの白い軍服の奴らが一色隊だろ?」

「噂で聞いたんだけど、あそこは雑用部隊って話だぜ」

「それなのに、あいつらだけなんで目立つ軍服着てんだよ」

「なんかウザくね?」


 その侮蔑の声は、一色隊の耳にも届いていた。

 今にも透花の悪口を言った相手に飛びかかりそうな颯に、柊平は静かに声をかける。


「……緒方、落ち着け。ここで喧嘩などしたら、それこそ相手の思う壺だ」

「でも、柊平さん! 透花さんのことを馬鹿にされて黙ってられないっすよ!」

「気持ちはわかる。だが、私たちの隊長はあの方だぞ。……見てみろ、あの顔を」


 柊平に促され、颯は壇上に目を向ける。

 そこには、自分や隊の悪口が聞こえているにも関わらず、いつもと同じように美しい笑みを浮かべる透花の姿があった。

 そして、穏やかに言葉を紡ぐ。


「私は確かに、王様に抜擢されて今の地位をいただきました。それは紛れもない事実です。なので、私のことはどのように言っても構いません。ですが、私の隊の人間を悪く言うのはやめていただきたいです。彼らは私の大切な仲間なので、悪く言われるのを黙って聞いてはいられませんから」


 そう言うと、とびきりの笑顔を浮かべる。

 会場の温度が下がったように感じるのは、その笑顔に温度がないからだろう。


「それに、一色隊の人間は皆優秀ですよ。明日、それを証明させていただきますね」


 彼女はその後、元々話す予定であったのだろう内容でスピーチを締めると、何事もなかったかのように舞台から下りたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ