虹色に光るまあるい玉
朝食を食べ終えると、大和、美海、颯、湊人、そして琉生の五人は庭へと出た。
青空の下で、水遊びをして過ごす。
「そーれ! いっくぜー!!」
「きゃー! つめたーい!」
「しかし、今日は暑いので気持ちがいいな!」
「………………………………!!」
琉生が来る前はあれほどガチガチだった颯も、すっかり緊張が解けたようだ。
全身を水で濡らしながら、子ども達と一緒に楽しそうに遊んでいた。
一通り水遊びをした琉生は、何かを準備している湊人に声をかける。
「それは、シャボン玉か?」
「ええ。私が作った特製の液体ですよ。やってみますか?」
「うむ!」
湊人からシャボン玉液を受け取った琉生は、優しくストローを吹いた。
そこから出た虹色のシャボン玉は、風に乗って飛んでいく。
しばらくすると地面に落ちてしまったが、なぜか割れないのだ。
「どういうことじゃ!? なぜ割れぬ!?」
「シャボン玉液に、色々秘密があるんです」
「なに!? そうなのか!」
「はい。幼い頃、割れにくいシャボン玉を作りたくて研究しましたから」
「子どもの頃からそんな研究をしていたとは、そなたは勉強熱心だったんじゃな!」
琉生の言葉に、湊人は自分の子ども時代に思いを馳せる。
貧しく、あまりおもちゃなどは買ってもらえなかった。
その研究は、少しでも長く一つのおもちゃで遊ぶためにしていたに過ぎない。
恵まれない幼少期を過ごした湊人にとって、今回の琉生の行動は理解できなかった。
琉生には、温かい食事に柔らかいベッドが用意されている。
それに加えて、高度な教育を受けることもできるのだ。
世の中にはそれができない子どもたちも多くいるというのに、目の前の少年はどうしてそこから逃げ出そうとしたのか。
嫉妬や羨望の類であろう感情が、湊人の胸中に渦巻く。
しかしこの男、それを表に出すほど子どもではないのだ。
いつもの営業スマイルを顔に貼り付けると、琉生に向き合った。
「お褒めいただき、ありがとうございます」
「うむ! どちらが遠くまでシャボン玉を飛ばせるかしょうぶしないか!?」
「受けて立ちましょう。そう簡単には負けませんよ」
彼らはその後、乱入してきた颯たちを含め五人で勝負することになった。
勝つこともあれば、負けることもある。
こうして午前中いっぱいは、爽やかな庭遊びを楽しんだのだった。