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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十六話 花咲けるネリネ
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笑い声に包まれた空間

 夕飯を食べ終えると、風呂の時間だ。

 広さ的には問題ないのだが、他人に裸を見られたくない湊人と理玖と颯、夕飯の片付けがある晴久、その手伝いの当番である柊平、そして異性である美海と透花を除いた五人で入ることになった。


「……はぁー、生き返るな」

「……(ブクブクブクブク)」

「蒼一朗さん、オジサンみたーい」


 蒼一朗、心、虹太の三人組は早速湯船で寛いでいた。

 少し遅れて、大和と琉生が入ってくる。

 大人数での入浴に慣れていない琉生は、恥ずかしくてなかなか服を脱げなかったのだ。

 大和に協力してもらい、ようやく準備ができたらしい。


「おっ、来たか。座れよ。髪の毛洗ってやるから」

「う、うむ……」


 緊張している様子の琉生に、蒼一朗は気さくに声をかける。

 蒼一朗に促され、琉生はお風呂用の椅子に座った。


「痛かったり、かゆかったりしたら言えよ」

「わ、わかった! よろしく頼むぞ」


 自分も椅子に座ると、蒼一朗は丁寧に琉生の髪をシャワーで濡らしシャンプーをつける。

 その手つきは、彼の外見からは想像もつかないぐらい優しいものだった。


「……お主、うまいな! とても気持ちいいぞ!」

「はは、ありがとよ。いつも大和の頭洗ってるから、こんくらい朝飯前だぜ」


 その後も二人は、ポンポンと会話を重ねていく。

 髪の毛を洗い終える頃には、すっかり打ち解けていた。

 大好きな兄を盗られるとでも思ったのだろうか。

 大和が自分の髪の毛を指しながら、蒼一朗の腕を掴んだ。


「ん? おお、次は大和のを洗ってやるよ。こいつのリンスが終わるまで待っとけな」


 蒼一朗の言葉に、大和はほっとしたような笑顔になった。


「蒼一朗さん、俺も俺も~!」

「……僕も」


 そんな大和に、虹太と心が便乗する。


「……心はともかく、お前は自分で洗えよ」

「えっ!? 何それ、心ちゃんだけ贔屓じゃん!」

「心はまだ子どもだからいいけど、お前は大人だろうが」

「まあまあ、そう堅いこと言わずにさ~」

「……よく考えてみろって。二十歳過ぎた大の男が、なんで自分より年上の男に髪の毛洗ってもらわなきゃなんねーんだよ。しかも裸で」

「え~。俺は全然気にしないのにな~」

「俺が気にするっつーの!」

「……っく、あははははは!」


 二人の掛け合いを見ていた琉生が、思わず笑い声を漏らす。

 その笑いは徐々に他の者にも広がり、浴室全体に響き渡っていく。

 あっという間に、浴室内は温かな空気で包まれた。

 それは決して、お湯や湯気のせいだけではないだろう。

 彼らはこの後、みんなで髪や体を洗い合った。

 すっかり緊張の解けた琉生も、楽しそうに参加していた。

 長風呂を心配した柊平が様子を見に来るまで、この楽しい時間は続いたのだった――――――――――。

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