笑い声に包まれた空間
夕飯を食べ終えると、風呂の時間だ。
広さ的には問題ないのだが、他人に裸を見られたくない湊人と理玖と颯、夕飯の片付けがある晴久、その手伝いの当番である柊平、そして異性である美海と透花を除いた五人で入ることになった。
「……はぁー、生き返るな」
「……(ブクブクブクブク)」
「蒼一朗さん、オジサンみたーい」
蒼一朗、心、虹太の三人組は早速湯船で寛いでいた。
少し遅れて、大和と琉生が入ってくる。
大人数での入浴に慣れていない琉生は、恥ずかしくてなかなか服を脱げなかったのだ。
大和に協力してもらい、ようやく準備ができたらしい。
「おっ、来たか。座れよ。髪の毛洗ってやるから」
「う、うむ……」
緊張している様子の琉生に、蒼一朗は気さくに声をかける。
蒼一朗に促され、琉生はお風呂用の椅子に座った。
「痛かったり、かゆかったりしたら言えよ」
「わ、わかった! よろしく頼むぞ」
自分も椅子に座ると、蒼一朗は丁寧に琉生の髪をシャワーで濡らしシャンプーをつける。
その手つきは、彼の外見からは想像もつかないぐらい優しいものだった。
「……お主、うまいな! とても気持ちいいぞ!」
「はは、ありがとよ。いつも大和の頭洗ってるから、こんくらい朝飯前だぜ」
その後も二人は、ポンポンと会話を重ねていく。
髪の毛を洗い終える頃には、すっかり打ち解けていた。
大好きな兄を盗られるとでも思ったのだろうか。
大和が自分の髪の毛を指しながら、蒼一朗の腕を掴んだ。
「ん? おお、次は大和のを洗ってやるよ。こいつのリンスが終わるまで待っとけな」
蒼一朗の言葉に、大和はほっとしたような笑顔になった。
「蒼一朗さん、俺も俺も~!」
「……僕も」
そんな大和に、虹太と心が便乗する。
「……心はともかく、お前は自分で洗えよ」
「えっ!? 何それ、心ちゃんだけ贔屓じゃん!」
「心はまだ子どもだからいいけど、お前は大人だろうが」
「まあまあ、そう堅いこと言わずにさ~」
「……よく考えてみろって。二十歳過ぎた大の男が、なんで自分より年上の男に髪の毛洗ってもらわなきゃなんねーんだよ。しかも裸で」
「え~。俺は全然気にしないのにな~」
「俺が気にするっつーの!」
「……っく、あははははは!」
二人の掛け合いを見ていた琉生が、思わず笑い声を漏らす。
その笑いは徐々に他の者にも広がり、浴室全体に響き渡っていく。
あっという間に、浴室内は温かな空気で包まれた。
それは決して、お湯や湯気のせいだけではないだろう。
彼らはこの後、みんなで髪や体を洗い合った。
すっかり緊張の解けた琉生も、楽しそうに参加していた。
長風呂を心配した柊平が様子を見に来るまで、この楽しい時間は続いたのだった――――――――――。