その頃、一色邸では
透花から連絡を受けた柊平は、急いで隊員たちを招集した。
そして、事情を説明する。
「……というわけで、これから王子を連れてこの屋敷に戻られるそうだ」
権力にあまり興味のない、虹太、蒼一朗、心、理玖の四人は落ち着いたものだ。
「この国の王子様って、確か大和くんや美海ちゃんと同じくらいの歳だったよね~」
「そうなのか? あいつらに友達が増えるのはいいことだよな」
「ぱかおは、どうしよう……」
「……隠しておいた方がいい。僕ら以外の目に触れるのは危険だ」
反対に、晴久、颯、湊人の三人は大混乱である。
「ゆゆゆ夕飯はどうしましょうか!? 何か豪勢なものをお出ししないと……!」
「王子って、王様の息子ってことっすよね!? うっかり粗相でもしたら……!!」
「一色隊のことを気に入ってもらえるように、今すぐおもてなしの準備をしましょう!」
柊平は透花から届いたメールを読みながら、言葉を続ける。
「……少しの間とはいえ立場を忘れるためにこの屋敷にいらっしゃるのだから、過度なもてなしや豪勢な料理は不要だ。よって、夕飯は普通のものでいい。むしろ、庶民の子ども達が食べるようなものを用意してほしいと隊長は仰っている。遠野、任せても大丈夫か」
「わかりました……!」
「よろしく頼む。……二階堂、緒方、お前たちは興奮しすぎだ。王子というよりも、親戚の子どもが遊びに来るような感じで大丈夫だ」
「そうは言われても、親戚なんていないからわかんないっすよ……!」
「右に同じです」
「……あいつらを見習ってなんとかしてくれ」
柊平の視線の先には、全くと言っていいほど動じていない四人組がいた。
「あっ、みんなでお風呂に入ろうよ~☆ せっかく広いんだし!」
「たまにはいいな。明日は庭で遊ぶってのはどうだ? 子供らしいだろ」
「水遊び、シャボン玉……」
「……遊ぶのは構わないけど、熱中症とかには気を付けてよね」
既に、王子と何をするかの話で盛り上がっている。
この順応性には拍手を送るべきだろう。
「……では、みんな頼むぞ。二時間もすれば、隊長と王子が戻られるはずだ」
その言葉に、各自バラバラの返事をする。
様々な思いを抱きながら、あっという間に二時間は過ぎ去ったのだった。