君がいないとダメみたい
あっという間に晴久不在の期間は過ぎ、彼は屋敷へと戻ってきた。
綺麗に掃除された邸内、青空の下に揺らめく洗濯物、水を受けいきいきとしている野菜たち、そして古い物はなくなり新しい材料が入っている冷蔵庫を見ると、寂しい気持ちになる。
(みなさん、僕がいなくてもなんの問題もなかったのですね……)
しかし、すぐにその後ろ向きな考えを振り払った。
(雅紀くんと約束したばかりじゃないですか……。僕は僕らしく頑張るって……!)
晴久は愛用のエプロンをつけると、夕飯を作り始めた。
晴久の料理が久々に食べられるということもあり、その日の夕飯は全員が揃っていた。
皆がその食事に舌鼓を打っている中、最初に口を開いたのは虹太だった。
「ハルくん、いつもありがとね」
「え……?」
「一週間野菜の水やりをやってみて思ったんだ。俺がこうしておいしいご飯を食べられるのって当たり前のことじゃなくて、ハルくんやりっくんが頑張ってくれてるからなんだなって。だから、お礼を言いたくなっちゃっただけ☆」
「虹太くん……」
「あっ、ちなみにりっくんにも感謝の気持ちを伝えたところ、いつものように舌打ちされたよ♪ ほーんとツンデレさんなんだから!」
虹太をきっかけに、皆もそれぞれ言葉を紡ぎ出す。
「ヌルヌル、なかなかとれなかった……」
「……この広い邸内をいつも一人で掃除しているんだな」
「洗濯して干すまではできますけど、アイロンがけは難しかったですね」
「晴久さん! 俺、洗剤と柔軟剤は違うって覚えたっす!」
「……君、いつもどうやって僕の白衣を絞ってるの。そんな細腕で……」
「いや、それお前には言われたくないだろ。たまには料理するのもいいけどさ、やっぱお前が作ったやつが一番美味いわ」
「しばらくそうにいのご飯は食べなくていいよー! だって、お野菜大きいんだもん!」
美海の言葉に、大和もコクコクと頷く。
「みなさん……」
「私たちにはハルくんが必要ってことが、この一週間でよくわかったよ。ハルくん、いつもありがとう。みんな家事の大変さがわかったと思うから、今度からは手伝うと思うよ。だから、これからもよろしくね」
最後に声をかけたのは、もちろん透花である。
その笑顔を見ていると、晴久は漸く屋敷に帰ってきたという実感が湧いてきた。
「はい……! こちらこそ、これからもよろしくお願いします……!」
こうして、晴久不在の一週間は幕を閉じた。
全員苦労はしたものの、晴久には自信を、その他の者たちには感謝の気持ちを芽生えさせる有意義な時間となったことは間違いないだろう――――――――――。