愛情と野菜たっぷりのカレーはいかがですか?
①料理班の場合
「今日の夕飯は、ビーフカレー、トマトときゅうりのサラダ、ピーマンとちくわのきんぴら、あとはさっき作っておいたアイスクリームをデザートとして出そうと思っているよ」
「了解。ハルの奴、わざわざ献立とレシピまで残していったのか?」
「うん。悩まなくて済むからありがたいよね。とりあえず蒼一朗さんはカレーを作ってもらってもいいかな? 私は他のものを作りつつ、理玖用の料理を用意するから」
「わかった。野菜は切った後、少し分けておいた方がいいな」
「うん。じゃあ、取りかかろうか」
「おう」
料理班はこれといったトラブルもなく、順調な滑り出しである。
大和と美海も、野菜を切るなどの手伝いをしていた。
黙々と作業をしていると、美海が突然口を開いた。
「なんか、家族みたいだね! そうにいがお父さんで、とうかねえがお母さん! それでみうとやまとくんが子ども!」
その言葉に、柏木兄弟の表情が固まった。
透花はいつも通りの柔らかな笑顔を浮かべている。
「みうにはお父さんがいないからよくわかんないけどさ。あーあ、やまとくんはいいなー。だって、そうにいととうかねえが結婚すれば家族になれるんだよね? お母さんにはなれなくても、とうかねえが本物のお姉ちゃんになってくれるとかうらやましい!」
「……それは、お前のところも同じだろ。心とこいつが結婚すれば、美海の姉ちゃんになるじゃねーか」
「とうかねえがしんにいと結婚するわけないじゃん! だってしんにいは、とうかねえに比べてすっごく子どもだもん! 結婚相手としてふつりあいだよ!」
「……俺はいいのかよ」
「そうにいは大人だもん! それにすっごく強いし!」
「あ、ありがとな……」
美海の勢いに蒼一朗はタジタジである。
すると、自分の伝えたいことを綴ったノートを大和が見せてきた。
焦ったのか、いつもよりも字が雑である。
そこには、”とうかおねえちゃんとけっこんするのはぼくだよ!”と書いてあった。
どうやらこの大人しい少年は、透花に淡い恋心を抱いているらしい。
「えー!? やまとくん、とうかねえのこと好きなの!?」
“うん。だいすき!”
「結婚したいくらい!?」
“もちろん!”
「みう、やまとくんだったら応援するよ! そうにいやしんにいなんかに負けないで!」
“みうちゃん、ありがとう!”
盛り上がっている二人に、蒼一朗は声をかける。
「おいおい、心のことは不釣り合いって言ってたのに、更に子どもの大和はいいのかよ」
「やまとくんはいいの! でも、しんにいはダメ!」
「そ、そうか……」
(基準がわからねぇ……!)
このような会話をしながら、夕飯作りは和やかに進んでいった。
途中で美海が透花に好きな人はいないのかと問う場面もあったが、上手くはぐらかされてしまったようだ。
その日のカレーは晴久が作ったものとは違い野菜の大きさもバラバラで形も歪だったが、とても美味しかったという――――――――――。