前途多難な学校生活
一方、透花と柊平は、小学校組とは違う目立ち方をしていた。
「あの人、めちゃくちゃ美人じゃね!?」
「誰かの姉ちゃんかな!?」
「あんな綺麗な人が姉ちゃんとか、羨ましすぎる……!」
「見て見て! 超かっこいい人がいるよ!」
「ほんとだ! 入学式に出席してるってことは、誰かのお兄ちゃんかも!?」
「あの人の弟だったら、絶対イケメンじゃん! まぁ、妹かもしれないけどさ……」
美しい二人が並んで座っているというのは、それだけで迫力のあるものだ。
そんな周囲の噂話を気にすることなく、心と颯を見つけた透花はにこやかに手を振る。
透花に促され、柊平も静かに手を上げて挨拶をした。
心は無表情のまま小さく、颯は溢れんばかりの笑顔で大きく手を振りそれに応える。
「俺も手振られたい……!」
「あいつらだ! 今、あいつらに手を振ったぞ!」
「友達になりてー!」
「兄弟であんまり似てなーい」
「確かにお兄さんは綺麗系だけど、弟はかわいい系じゃん!」
「入学式終わったら声かけてみようよ!」
この会話が耳に届いた颯は、心の中で強く思うのだった。
(男子はいいけど、女子はマジで無理……! 終わったらすぐに男子校舎に逃げねーと……!)
颯は女性が苦手なため、本来ならば男子校へ進学したかった。
しかし、彼の学力で入れ屋敷から通える学校が男女併学の高校しかなく、泣く泣くここを選んだのだ。
行事などは一緒だが、校舎は分かれており異性の方への行き来は許されていない。
なので、男子校舎に入ってしまえば安心なのだ。
「心、俺は入学式が終わったら猛ダッシュで教室に戻るからな!」
「………………………………? うん」
周りの話など耳に入っていない心は、不思議そうに首を傾げてから頷く。
ちなみに彼はどの高校でもよかったので、颯と同じ所を受験した。
式の間中、心はボーっと、颯はソワソワしていた。
終了の挨拶と同時に体育館を飛び出した颯は誰よりも先に教室に着き、女子との接触を避けることに成功する。
逆に春の陽射しを浴びながらゆっくりと歩いていた心は、入学初日からホームルームに遅刻しそうになるというマイペースさを発揮するのだった。