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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十四話 ホタルブクロは正義を謳う
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優しさに包まれて

 翌日、柊平と透花は屋敷へ戻るために車に乗り込んだ。

 この車、柊平個人のものではなく隊として借りているものである。

 今回は私用ではなく任務なので、当たり前のことだ。

 だが相手が透花であっても、他人を自分の車に乗せたくないのも事実だった。

 エンジンをかけたところで、透花が柊平に声をかける。


「柊平さん、少し待ってもらえるかな。一応、酔い止めを飲んでおくから」

「かしこまりました」

「大丈夫だとは思うのだけれど、せっかく理玖がくれたしね」


 透花が鞄から取り出したのは、錠剤だった。


「……春原の作った薬にしては珍しく、粉末ではないですね。彼の薬はよく効きますが、粉状で苦く飲みにくいものばかりだと思っていましたが……」

「車の中で飲むことを想定して、今回は錠剤にしたみたいだよ。粉が飛び散ったりするの、嫌でしょう?」

「……気を遣わせてしまったようで、申し訳ないです」

「理玖は元々、錠剤も作れるの。だけど、粉末の方が作るのが簡単だし効くのも早いから、そっちをメインにしているって。でも最近、みんなから苦くて飲みにくいって文句を言われるから、また錠剤作りも始めたみたいだよ。だから、そんなに気にしなくて平気だと思う」


 透花は、ペットボトルに入っている水で薬を飲み下した。


「柊平さんもいる?」

「いえ、車酔いはしませんので」

「そうだよね。もし途中で糖分が欲しくなったら言ってね」

「……遠野ですか?」

「うん。さすが柊平さん、察しがいいね。ハルくんが作ってくれたグミがあります」

「グミ、ですか……?」

「うん。グミなら、零れたり匂いが残ったりしないでしょう?」


 隊で借りている車も清潔に使うことが、柊平のポリシーだった。

 それは、隊の全員が知っていることだ。

 そんな柊平のことを思っての理玖と晴久の心遣いは、とても嬉しいものだった。


「……はい。では、後ほどいただきます」

「うん。じゃあ、帰りも音楽をかけてと……」


 透花がミュージックプレイヤーに触れると、美しいピアノの旋律が流れ始めた。

 虹太がドライブ用に選りすぐり、用意してくれた曲たちだ。

 まだ練習中なので、彼自身の演奏ではないのが残念である。

 だが彼が選んだ曲は、そのどれもが柊平の好みに合っていた。


「じゃあ、行こうか」

「はい」


 こうして二人のドライブは、穏やかな音楽に包まれながら始まったのである。

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