並んで歩こう
「……隊長、隣を歩かせていただいてもよろしいでしょうか?」
この言葉は、お祭り会場からホテルまでの帰り道に柊平から出たものだった。
「もちろん! でも、急にどうしたの? 来る時に言ったことなら、そこまで気にしなくて徐々にでも大丈夫だよ」
「……先程隊長が男どもに声をかけられたのは、私が傍を離れたからです。帰り道こそ、隊長をしっかりとお守りしたいと思っております。そのためには、後ろよりも隣で警護する方が、効果が大きいと考えました」
「色々考えてくれてありがとう、柊平さん。じゃあ、手でも繋いで帰ろうか? 恋人に見えた方が、声をかけてくる人なんていないんじゃない?」
透花は、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「……からかわないでください」
柊平の頬が、うっすらと朱に染まる。
「あはは、ごめんね。隣に並んで、おしゃべりしながら帰ろう」
「……はい」
夜でわかりづらいとはいえ、柊平は赤くなった顔を見られたくないので少しだけ俯いた。
しかし、透花の柔らかな笑顔は全てお見通しの証拠なのだろう。
(本当に、この方にはいつも敵わないな……)
明日は、柊平にとって久々の休日だ。
どんな一日になるのだろうか――――――――――。