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プレッツェルとあなたの笑顔
「隊長、申し訳ありませんでした。私の戻りが遅くなったせいで、あのような輩に声をかけられてしまい……」
「ううん、ありがとう。せっかくの楽しいお祭りの雰囲気を壊したくてなくて。どうやって断ろうかなって考えている間にあんな風になっちゃって。柊平さんが来てくれて助かったよ」
そう言うと透花は、ふわりと微笑んだ。
それは、いつもの優しい笑顔だった。
「ところで柊平さん、それって……」
「はい、プレッツェルです」
「わー! 嬉しい! さっき見た時に食べたいなって思っていたの!」
「……そうですか。喜んでいただけたようでよかったです」
柊平は、透花がプレッツェルに向けた視線に気付いていたのだ。
(買ってきて、正解だったな……)
少女のような笑みを浮かべる透花を見て、柊平はそう思った。
「柊平さん、このプレッツェル塩気がいい感じでおいしいよ」
「……私もいただいてもよろしいですか?」
「うん、もちろん! 一緒に食べよう」
こうして二人は、その後二時間ほど楽しい時間を過ごしたのだった。