容易に触れてはいけない
柊平が三杯目に選んだ白ビールとプレッツェルを買って席に戻ると、透花は数人の男に絡まれていた。
先程までとは違い、今は軍服ではなく私服を着ているのだ。
透花の容姿では、仕方がないことだろう。
彼女の実力ならこの程度の男たちを退散させるのは簡単だが、せっかくの楽しいお祭りなのだ。
事を荒立てたくないと思い、透花は言葉だけでやんわりと断っていた。
その態度が、アルコールのせいでただでさえ気の大きくなっている男たちを更につけ上がらせてしまったようだ。
「連れがおりますので」
「だーかーらー、その友達も一緒でいいって!」
「ちょっとだけでいいからさー、俺らと飲もうぜ?」
リーダー格の男が、透花に触ろうとする。
柊平は、すかさずその腕を掴んだ。
「……この方に触るな。お前のような者が、容易に触れていい方ではない」
「柊平さん、おかえりなさい」
透花の連れを女だと思い込んでいた男たちは、突然の柊平の登場に驚いている。
「な、なーんだ、連れって男だったのかよ!」
「そうならそうと、早く言えよな! ったく……」
腕を掴んだ力の強さと、柊平の容姿を見てあらゆる方面で敵わないと悟ったのだろう。
男たちは、あっさりと退散していった。