陽だまりのような暖かさ
「……隊長がそのようなものを飲まれるとは、正直意外でした」
「え、そうかな?」
柊平と透花は現在、ソーセージなどのおつまみに舌鼓を打ちながら、二杯目のビールを口にしている。
一杯目はお互いに普通のビールを選んだのだが、二杯目は柊平が黒ビール、透花はビールをカシスリキュールで割ったカクテルを飲んでいた。
「こういう、甘くて飲みやすいものも好きだよ。あ、もしかしてこんな風に女の子が好きそうなものは似合わないって思っている?」
「……いえ、そういうわけではありません」
「気を遣わなくてもいいよー。隊員のみんなが、私を女扱いしていないっていうのには薄々気付いているから。この間颯くんと話していてね、どうして私は女なのに髪の毛のセットとかするのは平気なのかって話になったの。そしたら、颯くん、なんて言ったと思う?」
「……わかりかねます」
「“透花さんは女性っていうより、おばあちゃんって感じなので平気っす!”って言ったんだよ! それも、めちゃくちゃいい笑顔で! お姉ちゃんでもなく、お母さんも通り越しておばあちゃんって……。“女”としては見られているけれど、“女性”として扱われていないっていうのがよくわかったよ」
ここまで言うと、透花はカクテルを一口飲んだ。
「……緒方の非礼を、私からも謝罪させてください。きつく注意しておきますので」
「大丈夫だよ。颯くんの気持ちも、さっきの柊平さんの気持ちもなんとなくわかるから別に気にしていないもの。それに、変に女扱いされるよりはいいかなとも思うし。そういうの意識して、仕事がやりづらくなったらどうしようもないでしょう?」
透花の陽だまりのような暖かさには、確かにどこか年配の女性を彷彿とさせるものがあった。
それでいて、見た目は美しく凛々しく、このようなさっぱりとした物言いをする。
(本当に、不思議な方だ……)
柊平は常々、そう思っていた。
「あ、柊平さんそろそろ飲み終わっちゃうね。次のビール買ってきたら? 私はまだあるから、ここで待っているよ」
「……では、お言葉に甘えて行かせていただきます。何かありましたら、すぐにお呼びください」
「うん。行ってらっしゃーい」
こうして二人は、しばらくの間別行動をとることになったのだった。