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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十三話 時を刻むニオイスミレ
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夢への軌跡は、まだ始まったばかりだ。

 後日、颯と夏生は由莉の店に行った。

 由莉が夏生を気に入ってしまい色々と大変だったが、無事に服を購入することができた。

 そして今日は、遂に夏生のチェキ会当日である。

 夜から出掛ける虹太のためにヘアセットをしていると、颯の携帯電話が着信を告げる。

 すぐに音が途切れたので、電話ではなくメールのようだ。


「颯くん、ケータイ鳴ったよ~」

「ちょっと手が放せないんで、読み上げてもらってもいいっすか?」

「合点承知の助~☆」


 掌がワックス塗れの颯の代わりに、虹太が颯の携帯電話を手に取った。

 颯はその性格ゆえかロックをかけていないので、すんなりとメール画面まで進む。


「有川夏生くんって子からだよ~」

「やっぱり有川か! なんて書いてあるっすか?」

「『今日のチェキ会、大成功だったよ! メンバーからもファンの人からも、オシャレだねって褒められちゃった☆ 緒方くん、本当にありがとう!』だって。画像もついてるみたい」

「見せてもらってもいいっすか?」

「ほい、どーぞ♪」


 そこには、爽やかかつ上品な服に身を包み、髪型もバッチリ決まった夏生がいた。

 ピースをしながら、キラキラと輝く笑顔を浮かべている。


「うおおおおお! 成功してマジよかった!」

「あっ、まだ続きの文章があった。『僕たちがコンサートできるくらいのグループになったら、絶対に招待するからね!』って書いてある」

「虹太さん、代わりに返信してもらってもいいっすか?」

「もちろーん☆ なんて返すの?」

「まずは、『今日はうまくいってよかったな! また買い物行こうぜ!』でお願いします!」

「はいはーい」

「打つのはやっ!」

「えへへ~♪ メールの早打ちには自信あるよん☆ 次はなんて打つ?」

「『コンサートに呼んでくれる時は、客は男限定で頼むぜ!』で!」

「……颯くん、結構難しいこと言うね~」

「そっすか? ほら、たまにあるじゃないすか! 女性客限定の女性アイドルのライブとか、男性客限定の男性歌手のコンサートとか! あんな感じっすよ!」

「じゃあ、この夏生くんには有名になってもらわないとね~。そういうのって、同性だけでも集客が見込めないと実現しないだろうし」

「多分大丈夫っすよ! 俺、あいつがビッグになるって信じてるんで!」


 そう言った颯の顔は、先程の夏生に負けないくらい輝いていた。

 若者たちの夢への軌跡は、まだ始まったばかりである。

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