表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十三話 時を刻むニオイスミレ
149/780

実り多く、謎が深まった一日でした。

「緒方くん、今日は本当にありがとう!」

「別にいいって! 人を着飾るのは、俺の趣味だしな!」


 夕方ということもあり、ヘアアレンジをマスターした夏生は帰ることになった。

 二人が玄関に着いたところで、扉が開く。

 聞こえてきたのは、柔らかな声だった。

 このような声を出す人物など、この屋敷には一人しかいない。


「透花さん! お帰りなさいっす!」

「ただいま、颯くん。今日はお友達が来ていたんだね」

「うっす! クラスメイトの有川夏生です!」

「こ、こんにちは……」

「こんにちは。この屋敷の家主の一色透花です」

「は、はあ……」

「俺、有川のこと大通りまで送ってくるっす!」

「はーい、行ってらっしゃい。有川くん、よかったらまた遊びにきてね」

「あ、はい! お邪魔しました!」


 神妙な面持ちで、夏生は屋敷を後にした。

 しばらくはそのまま歩いていたのだが、意を決して口を開く。


「……緒方くん」

「ん? どうした?」

「……さっきの一色さんって、女の人だよね?」

「当たり前だろ! まさか、男に見えたのか!?」

「いや、そうじゃなくて……。緒方くんは女嫌いなのに、なんであの人は平気なのかなって思ってさ。とっても綺麗な人だったし……」

「あー、そういうことか! 俺、透花さんには何故か女を感じねーんだよ!」

「……はい?」


 颯は、失礼なことをさらりと言い放った。


「女が全員ダメなわけじゃないんだ! 例えば幼稚園生とか小学校低学年くらいの女の子、これは女性っていうよりも少女だろ? だから大丈夫っぽい! 同じように、お年寄りなんかも平気だぜ! こっちは、女性っていうよりもおばあちゃんって思うからな!」

「言いたいことはわかるけど、さっきの一色さんはどっちにも当て嵌まらないんじゃ……」

「そうなんだよ! 自分でも不思議なんだよなー! でも俺、透花さんにはこれっぽっちも女性を感じないんだ! もちろん、美人だとは思うぜ!」

「……そっかぁ」


 笑顔で言い切った颯に、夏生はこれ以上の言及を止めた。

 彼の言いたいことはわかるが、理解はできないと思ったからだ。

 そんなことを話している間に、いつの間にか二人は大通りに出ていた。


「この辺まで来れば、後はわかるか?」

「うん。緒方くん、今日は本当にありがとね!」

「ほんと気にすんなって! すっげー楽しかったし!」

「うん、僕も! 買い物も楽しみにしてるね!」

「おう! じゃあ、また明日学校でな!」

「うん、ばいばーい!」


 こうして、二人は別れた。

 この日は夏生にとって、実りの多い一日となった。

 同時に、颯に対する謎がぐんと深まることにもなったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ