広報係としての仕事も欠かしません!
「二階堂さん、この度は本当にありがとうございました」
理玖が大吾と話している頃、湊人のもとには日菜子の父親が訪れていた。
「いえ、私は依頼に応えただけですので。お礼を言われるようなことは何もしていませんよ」
「そのおかげで娘と和解できたのは事実ですので、お礼を言わせてください。あなたにお願いしていなかったら、会うことはできてもこんなにスムーズに和解はできなかったと思うんです。一生見れないだろうと思っていた娘の晴れ姿も見れて、感無量です……!」
「依頼者に喜んでいただけると私も嬉しいですから。そのために、最善を尽くしただけです」
そう言うと、湊人はいつものように笑顔を作った。
しかしそれは、今までとは違い完璧な営業スマイルではない。
ほんの少しだが、彼自身の微笑みが表情に現れている。
「こちらの依頼以上のことをしていただいたので、お返しができればと思うのですが……」
「先程も申し上げましたように、私は依頼に応えただけです。それに対してお礼をいただくのは、私個人としても一色隊としても本意ではありません」
「ですが……」
「……では、一つだけお願いさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい! 私にできることならなんでもどうぞ!」
「これからも、どうぞ一色隊をご贔屓に。困っている方がいましたら、ぜひうちの隊にご依頼をとオススメしていただきたいのです」
湊人が浮かべた笑みは、今度は百パーセントの営業スマイルだった。
父親も、湊人の意図に気付く。
彼はこの一件をここで終わらせるのではなく、次の仕事に繋げようとしているのだ。
抜け目のない男である。
「わかりました。一色隊は頼りになると、広めさせていただきますね」
「話が早くて助かります。よろしくお願いします」
話を終えると、二人は別れる。
湊人は食べ物を取りに、父親は愛する娘のところへ。
その後もケーキ入刀や、日菜子が父に向けて手紙を読んだりとパーティーは盛り上がり、夕方頃にお開きとなったのだった。