たまにデレるからこそツンデレなのです。
「春原せんせーい!!」
透花と話を終えた大吾は、どたどたと走りながら理玖のもとへとやって来た。
「……何」
「花のことも、今日のことも、庭師のことも、本当に色々ありがとうだべ!!」
そして、勢いよく頭を下げる。
「……別に」
「先生はなんで、こんなにおらによくしてくれるんだ……?」
そう言われ、理玖は大吾の手を見る。
渡した薬をきちんと塗っているようで、少しはよくなったようだ。
だがその手は、未だに荒れている。
(……こういう手をしている人には、幸せになってもらいたいだけだ)
しかし理玖は、ここで素直に自分の想いを伝えられるような男ではない。
「……君が、街で老人を助けるのを見たんだ。見返りを求めずに人のために働く君を、愚かだと思った。……でも、たまには僕も、そんな風に愚かになるのもいいんじゃないかと思ってね。それだけだよ」
「せ、せんせえ~。お、おら、嬉しいべ……」
理玖の捻くれた言葉に、なぜか大吾はいたく感激した様子だ。
遂には、大きな声で、ぼろぼろと涙を零しながら泣き出してしまった。
だから大吾は、気付かなかったのだ。
「……ほら、顔拭いて。これからケーキ入刀があるんだから。今日の主役がそんな顔をしていたら、みっともないだろう」
そう言ってハンカチを渡した理玖の耳が、微かに赤くなっていたことに――――――――――。