花びらの間に溶ける言葉
「透花さん、何からいく? 食べ物も飲み物も、選り取り見取りだよー」
「虹太くん、ありがとう。じゃあまずはお酒を貰おうかな。夜桜を見ながらお酒を飲むなんて風流なこと、なかなかできないし」
「……透花さん、これおいしいよ。あげる」
「心くん、ありがとう。……んー、本当においしいね! さすがお肉屋さんのコロッケ!」
「……これうまっ。食うか? 食うならよそるけど」
「蒼一朗さん、ありがとう。……この肉巻きおにぎり絶品! 王様が出してくれた料理も全部おいしかったのだけれど、オシャレすぎて、イマイチお腹にたまらないものが多かったんだよね。こういうの今日ずっと食べたかった!」
「隊長、今日一日本当にお疲れ様でした。春とはいえ夜はまだ冷えます。どうぞ、こちらをお使いください」
「柊平さん、ありがとう。このストール、とても温かいね」
「……君、今日は結構飲んだんじゃないか。一応、薬を渡しておくよ」
「理玖、ありがとう。気分が悪くなりそうだったら、すぐに飲むね」
「透花さん。これ、よろしかったらどうぞ。僕が作ってきたものなんですけど……」
「ハルくん、ありがとう。わぁー、かわいい! 桜色のクッキーだ! とってもおいしいよ!」
「透花さん、はい、おしぼりどうぞ。皿もそろそろ取り替える? 新しいものがあるよ」
「湊人くん、ありがとう。相変わらず、細かいところまで気がつくね」
透花は、みんなの会話の輪に入らず、ただ笑顔でその光景を見ている颯に気付き声をかけた。
「颯くん、どうしたの?」
「こういうの、すげぇ楽しいなって思ってたんっす!」
颯はそう言うと、キラキラと輝く笑顔を透花に向ける。
透花は、改めて思った。
(国民の方々の善意でいただいたもので、大切な仲間たちと一緒に楽しむことができる。それってものすごく……)
「あたたかい、なぁ……」
透花の呟きは誰の耳にも届くことはなく、桜の花びらの合間に溶けていった。
若く美しい不思議な少女が治めるこの隊は、これからどうなっていくのか。
それを知る者は、きっと、この世にはいないのだろう――――――――――。