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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第十一話 ベナムールに愛を誓う
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真紅の道を通るのは

「……ここ、庭だな? なんでこんな場所に……」


 大吾は目隠しをされたまま、颯に庭まで連れ出されていた。

 視覚は働かないものの、風の音や花の香りで、場所を感じ取ったようだ。


「もうすぐわかりますって! ……あっ、理玖さん! じゃあ、俺はこれで!」


 理玖が来たのを見届けると、颯はその場を離れる。


「……手を出して」


 理玖は、目隠しをしたままの状態の大吾に言う。


「そ、その声は春原先生だべ!? もしかして……!」

「……うん。花を持ってきたから、あげる。受け取ったら、目隠しを外していいよ」

「わー、先生、本当にありがとな! これで嫁さんも、絶対に喜んでくれるべ!」


 大吾は俊敏な動きで手を差し出すと、理玖から花束を受け取る。

 そして、目隠しを外した彼の目に飛び込んできたのは――――――――――。


「みんな、なんで……」


 いつも接している、街の人々だった。

 よく見ると大吾の目の前には祭壇のようなものが置かれており、その奥には牧師に扮した少年がいる。

 その祭壇を、白い花でできたガーデンアーチが囲っていた。

 そして、屋敷の窓から自分の足元へと続く、赤を基調とした多くの花びらでできた道。

 それはまるで――――――――――。


「バージンロード、みたいだべ……」


 大吾はぽつりと呟いた。

 ここでようやく、自分が受け取った花に目を向ける。


「先生、これ……!」


 花を単体で渡されると思っていた大吾は、それが美しいブーケへと姿を変えていることに驚きを隠せない。


「……花は渡したよ。じゃあね」


 理玖はそっけなく言うと、そのまま去ってしまった。

 色々な情報が一気に脳へと入ったため、大吾の頭はパンク寸前だ。


「……これより、新婦が入場してまいります。皆様、窓の方をご覧ください」


 混乱中の大吾の耳に、聞いているだけで落ち着くような、どこか温かみのある女性の声がマイク越しに聞こえた。

 その声に釣られて、大吾も窓の方に体ごと視線を向ける。


「それでは、新婦入場です……!」


 女性の声とともに、カーテンと窓が開いた。

 そこにいた人物を見て、大吾は息を飲む。


「日菜子……。そ、それに旦那様!?」


 そこにいたのは、白いドレスに身を包み綺麗に支度をした最愛の妻と、彼女の父親でありかつて自分の雇い主だった男だった――――――――――。

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