馬子にも衣裳
湊人と別れた理玖は最後に、大吾と颯が入って行った部屋を訪れた。
「あっ、理玖さん! 見てください! 完成っす!」
「く、苦しいべ……」
「……へぇ、馬子にも衣装だね」
そこには、颯によってヘアメイクされ、セレモニースーツに着替えた大吾の姿があった。
しかしそのスーツは、大吾には少しきつそうである。
「さすがに、蒼一朗さんの服でも少しきつそうっすね……」
「……身長はともかく、体型が違うから仕方ないよ。まぁ、破けるようなことはないし、別にこれでいいだろう。じゃあ僕は、これから花を取りに行ってくるから」
「おっ!? 遂に花を貰えるんだべか!?」
理玖の言葉に、大吾は目を輝かせる。
「うん。……だから、最後までしっかり彼の言うことを聞いてね。そしたら、ちゃんと花は渡すから。……じゃあ、後はよろしく」
理玖はそう言うと、二人に背を向けて扉の方へと歩き出す。
「では、佐々木さん! この目隠しをしてください! そしたら移動するので、俺の手にしっかりと掴まって離さないでくださいね!」
「目、目隠し!?」
理玖は二人の会話を聞きながら部屋を出ると、自分の部屋に戻った。
大吾同様にセレモニースーツに着替えると、彼が欲しがっていた花である“ベナムール”を中心に優しげな色の花で構成されたブーケを持ち、再び部屋を後にするのだった。